第28話 配下の大多羅
「「ぎゃっ!!」」
「まっマンバ様!そっそれは?」
クロをもふもふ、もふっておると、目覚めたカズマ達が慌てておる。
改めて考えてみると、黒い巨体のフェンリルはインドゾウ位でかい、そりゃビックリするわ。
仔フェンリルにしても、馬位はある。
仔フェンリルは白っぽい灰色の毛じゃ、成体に成るまでは白樺の森に紛れる、保護色じゃな。
「慌てんでよい!この3頭は昨夜使役した」
「黒デカがクロで、この仔がジュンこちらがジュニじゃ」
「使役したって?マンバ様ぁヤンを亡くしながら死闘したフェンリルでしょ!!」
「餌をやったらなつかれた」
「なつかれたぁ?凶暴なフェンリルに餌付けできるかぁ」
「カズマさん、ガキンチョのやる事、気にしたら負けだぞ!」
「テツひどい!わしを非常識の塊みたいに言う」
げんなり疲れた皆は、朝飯欲しくないと言い出した。
クロ達も晩飯だけ、一日一食しか食わんそうじゃ。
朝飯用意も面倒じゃ、2~3日食わんでも死にゃぁせん。
ジュンにテツが乗り、ジュニにナオが乗る、クロにわしとカズマが乗り、人里目指し進む。
速い速い!クロ達の歩みはパワフルじゃ!!
昼には、小高い山が行く手に見えてきた。
さて、山を登るか大回りしている平地を行くか、山向は気にせず南下するか、何れにしても初めての地。
縦横に通じる数千条の道を心の赴くまま行けば、観るべく聴くべく感ずべき得物があるはずじゃ!!
新大陸を歩くには道を選んではいけないってか?武蔵野か!!!
見晴らしのよい登山に決定!!
わし達にとって、登山はしんどくも何とも無い!しんどい目をするのは、フェンリル達、わしらは乗ってるだけ、楽チンじゃ。
山よりデッカイ獅子は出ん!!
はずじゃが·····山を跨いどる超巨大男は何じゃ!!!
頭を雲の上に出し、富士山みたいな奴じゃな。
「おーーいっ、そこの超巨大男ぉ!!!」ダメじゃ、聞こえて居らん。
顔の前に飛んで行き。
「おいっ!超巨大男!!」
大男はギョロリ寄り目で、やっと目の前のわしに気付いた。
「··········?·····?大王様?山姥様ぁ」
轟き渡る大音響!大男の声で吹っ飛びそうじゃ。
「お前、まさか、だいだらぼっち、大多羅か!!」
「山姥様ぁ、でえだらぼっちですじゃ!!100年大王様を探し回りましたじゃ!!!」
「大多羅、小さくなれ!!声がガンガン響く、鼓膜が破れ再生破れの繰り返し、会話にならん」
「おぅ!失礼しましたじゃ、ちょいと待って、つかぁさい」
大多羅の最小スタイル3メートルに縮んだ。
「大王様ぁ探しましただ!!わし寒みいのはおえんで、じゃぁけど向こうの大陸に行かにゃあ会えん思うて、頑張ったんじゃ」
「大多羅ちょっと待て!岡山弁で支離滅裂意味が解らん、餅突けペッタン」
「わしを追いかけ、異界を渡り100年探し回ってくれた、そう言う事か?」
「うぉーーーん、そ、そ、そうですじゃぁーー逢いたかったぁーーー」
「大男が泣くな、みっともない」
「大多羅この世界の事、誰から聞いた?」
「九十九神の奴が、神界の話を聞いたとかで、天照大神様が、山姥様を最下層界に送ったとか」
「そうじゃ!その、てんてるだいじんの奴等が、500年拉致監禁をやりやがって」
「大王様、あまてらすおおみかみ様ですだ」
「そう、そのテンテルに去年この世界に落とされた」
「去年?だか?」
「大多羅、異界渡り適当過ぎるぞ、100年のズレで良かった、何万年もズレておったらまず会えん所じゃった」
「山姥様、ウラ、盂羅の兄貴に猫又の姐さん、背の目の旦那も大王様を追ってこの世界に来てますだ」
「鬼の盂羅に猫又、背の目まで来ておるのか!!懐かしい、会いたいのう!!」
「山姥様ぁ、日本は妖怪の住めん所に、なってしまっただ」
「そうか、異界渡りの大多羅が来てくれた、日本に帰って見たかったが」
「マンバ様·····だいたい事情は聞いて居て解りますが、この場で長話は」
「おぅカズマすまん!」
「大多羅!こちらは高田和真、こちらが三重奈緒と三重哲に使役したフェンリル親仔」
「皆、こいつは、日本でわしが、妖怪の大王をやって居た頃の配下で、だいだらぼっち事、大多羅じゃ」
「こいつに聞いた話では、他に鬼の盂羅と化け猫の猫又、それに背の目も来ておるそうじゃ、此からはそいつらを見つけるのを、主目的で旅をする」
「山の頂上を目指すぞ!!」
「大多羅!走ってついて来い!!」
頂上に着いたが、霞んで見渡せん。
蒸し芋と串焼き肉で昼食。
フェンリルは食わんし、皆は昨夜食い過ぎで胃もたれ状態、食が進まん。
喜んで旨い旨い!と食ってくれたのは大多羅だけじゃった。
大多羅が大食らいしたが、ずいぶん串焼き肉が残った。
大多羅は握り飯も大量に食っておった。
逆に食べてくれんかと思った蒸し芋、塩を付けただけの芋が皆に食い尽くされた。
「大多羅、満足したか?」
「大王様ぁ握り飯久し振りじゃ!!でぇれぇ食うた、食い過ぎで動けんぞな!!」
「米の飯は、ここに来てから初めてじゃぁ」
新大陸には米が無いんか、食に関しては期待せん方が良さそうじゃ。
「大多羅、猫又がおる所はわかるか?」
「ようわからんだが猫又の姐さんは、向こうの大陸にいったようじゃぁ」
「向は?海じゃろう?」
「海を越えたら、大王様の大陸とは別の大陸があるんじゃぁ」
「猫又は後回しにするか」
「背の目の旦那なら、居場所知ってるだ!」
「背の目の旦那は、[必ず山姥様は、わっしを見付けて下さる、下手に動かん方が良い!!]と言って中央の国に居るんじゃぁ」
「出来るだけ早よぅ、その中央の国とやらに行くぞ!」
新大陸を漠然と歩くより、目標が出来て、来た甲斐が有ると言うもんじゃ!!
マンバは背の目に早く逢いたくて、クロの歩みを急かした。
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