第24話 トボトボと帰還

熊さんを嫌がるコロに乗せ、ヤンの亡骸を架空袋に収納。

全速力のコロに合わせ、わしは飛翔する。


氷の列島を引き返し、凍り付いた渓谷を駆け抜け、永久凍土を夜通し走る。

ワルダクミ帝国、改名ナオエ大国最北端にたどり着いたのは、太陽が中天に差し掛かった所じゃった。

コロも熊さんも、息も絶え絶えといった感じ、小休止が必要じゃ。

惨めな気持の帰還じゃった。


しばらく休憩を取って、山道を駆け降り、やっと開けた大地が見えた。

泣きっ面に蜂とはこの事じゃな。

大軍勢が睨み合って、今にも開戦と言った場面に遭遇した。


「熊さん、これは?」

「·····元スサンダ王国軍··········反乱のようです」

「··········反乱じゃと?」

「クソ腹の立つ!!」


「わしは、飛んで行く!!!」

言い残し高速飛翔で、両軍の中央に降り立った。


両軍共に、急に空から降りて来た幼女に驚き、動きを止めた。

全体が見えるよう、ゆっくり3メートル上昇し、反乱軍に語りかけた。


「わしは、神の大陸を取り仕切るマンバ神じゃ!!」

「··········」

「元スサンダ王国軍、離反するなら勝手にしろ!!独立国として認めてやるが、今後一切神王国の援助は打ち切る!!!」

「··········」

「交易もせん!!国交断絶じゃ!!独自に勝手にやれ!!」

「今後ちょっかい掛けて来たら、国ごと消滅させる!!心して独立せよ!!!」


「以上じゃ!ナオエ大国軍解散!!!」

神王国領ナオエ大国軍は、指揮官の号令の基全軍一斉に後退した。

反乱軍はしばらく戸惑った後、望んだ勝利とかなり違った終結ではあったが、念願の独立が叶った事で意気揚々と引き揚げて行った。


スサンダ王国は、神の大陸最北端西側に位置し、年間半分が雪に閉ざされる厳しい領地、野菜に穀物が常に不足していて、生き延びる知恵として、生肉に生の内臓を食する風習がある。


熊さんは年間を通じた食糧援助、雪に閉ざされた時の除雪、交通網の整備、豪雪に耐える建造物、無学聞盲の民に教育等、顔に似合わない繊細な統治を行っておったようじゃ。


スサンダ王は独立したのは良かったが、厳しい風土の民の統治は困難であり、民の不満を他に向ける必要から神王国を悪者に、悪の権化と罵り民衆を悪意で先導して行った。


スサンダは、独立から一月もしない内に、神王国に対し

「我々は長きに渡り不当に占領され植民地扱いを受けた、[謝罪と賠償を要求する]」

と言ってきた。


この手の、ヤクザ的話に乗ると、未来永劫たかり尽くされる落になる、国交断絶しておる!無視じゃ!!!





ヤン達の故郷、クロノの森に関係者が集い、しめやかに葬儀が執り行われた。

墓に納められたヤンに、最後の御別れ、やり遂げた良い表情が余計に悔しい。

墓に2頭の仔狼が飛び降りて、ヤンを起きてと言うように、ツンツンつつき無反応に対しペロペロなめ回しておる。

メス狼が悲しそうな唸り声で見守っておった。

ヤンに嫁さんと子供が居たそうだ、知らなんだ··········涙で霞んでよう見えん。


(ヤンごめんね!·····今までありがとう·····皆を見守って居て··········)

わしの心のような曇天、今にも雨が降りそうじゃ。



敵対者には容赦ないが、身内には不必要に甘いマンバの事、ヤンを失ったことは思いの外心にのし掛かって来る。

ああすれば、こうすれば、ヤンは死なずに済んだのではないか?

先に立たないから、後悔と言う。

我ながら情けないと思いながら、後悔を繰り返す毎日。


何もする気が起こらんのぅ。

新大陸?何?それ美味しいの··········

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