第23話 新天地にて

コロとヤンが駆け抜ける。

わしらは何ともないが、熊さんが寒さで相当衰弱しておる。

凍土を抜けて、白樺っぽい森に到着した。

夕刻にはかなり時間があるが、開けた場所で焚き火を囲む。


背に乗せて同行した熊さんが心配なのか、ヤンがお腹に抱いて暖めておる。

架空袋から鍋を取り出し、スープっぽいごった煮を作る、焚き火と暖かい食べ物で、熊さんがやっと復活した。

「マンバ神、ご迷惑をおかけした、極寒の夜営がこれ程堪えるとは、我ながら情けない!!」

ずっと暖めてくれた、ヤンの首筋をなぜながら、すまなそうに熊さんが言った。

「雪の中で普通に眠れる、わしやシルバーウルフと同行出来る、熊さんも凄いぞ!!」


「ウォウッウーー」

凍土を抜けてほっと一息入れてる所、のんびりさせてくれんようじゃんな。

「取り囲まれたようじゃ!!」

コロも唸り声で警告しておる。

熊さんも剣を抜き臨戦体勢。


夜この地に到着しなくて幸いじゃった。

「わしの感も、まだまだ錆び付いておらんな!」

コロを一回り巨大にした、深黒の狼が5頭威嚇しておった。

インド像位のデカイ狼じゃ。

(主、狂暴なフェンリル注意!!)


「コロ、この黒デカ知ってるのか?」

(狼種で最強最悪)

「シルバーウルフより強いのか?」

(別格の強さ!!)「要注意ね、わかった!!」


先手必勝じゃ!!!正面におる黒デカ3頭に鬼火を投げ掛けながら。

「コロとヤン2頭で後ろの黒デカ一頭を相手せよ!!」

「熊さんはわしと背中合わせで、後ろ一頭を任せる!!」

攻撃を受けた黒デカ3頭は、炎を立て燃えながらまだ向かって来よる!

(骨まで灰にする高温の鬼火のはずが、丈夫な化け物じゃな)


熊さんは·····隙を作らず睨みを利かせておる、しばらく大丈夫じゃな。


黒デカの首に食らい付いたヤンは、はじき飛ばされ、その隙にクロがガッシリ首に食らい付いた。

ヤンはたいしたダメージを受けて居らんのか、相手の柔らかい腹に食い付き引き裂いた。

首を決められ、腹を裂かれ腸が飛び出した黒デカが、力尽きたようじゃ。

ヤンは更に留めとばかりに、黒デカの腹に頭を突っ込み、心臓を噛み砕いた。

流石じゃ!!油断の無い攻撃じゃな。

「ヤン!!でかした!!!」


超カマイタチで燃える3頭の首を落とす。

首無しでも、数歩向かって来て、やっと倒れた。「しぶとい!!」

熊さんと対峙していた一頭は逃げ出した。


「皆怪我は·····」

「ヤン!!!」

返り血じゃ無い!!

顔から止めどなく出血!!左顔面をえぐり取られたヤンが倒れておる。

大急ぎ草をかき集め、もみもみグチャグチャ、ヤンの傷に!!!

「うそじゃろ!!ヤン!!!目を開けろぉ!!!!!!」


口の中には噛み砕いた心臓が、あの時既に死んでおったのか··········

ヤンはやり遂げた、満足顔で、事切れておった··········


熊さんの吠えるような号泣きを聴きながら、わしは脱力感に崩折れる。


この世界に紛れ込み、最初から行動を共にして来た、大切な仲間を·····

「気紛れに、こんな所に来るんじゃ無かった··········」

「ヤンを連れて、クロノの森に帰ろう·······」

山姥になって700年、初めて泣いた。

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