第二章 精霊大陸
第22話 北の果てには
大陸制覇より面倒な事、住民の暮らし、今まで銘々其なりに暮らして居ったもの、放って置いても良い、各地の統治者に丸投げ·····出来れば楽なのじゃが、各地の見廻りに運営指導(強制)に月日が流れた。
居城は金閣城に決めたが、城でのんびり過ごす事も出来ん。
わしが孫との約束「何をしてでも生き抜く」その為にやって来た事じゃが、こんな状態望んだ訳じゃ無い。
面倒じゃ!飽きたぞ!!
説明するのも面倒じゃが。
砂漠の黒い水溜まりは、予想通り原油じゃった。
揮発油、ガソリンは利用方法が今は無いのう、蒸気機関飛び越して内燃機関ガソリンエンジン造る訳には行かんじゃろ。
ガソリンエンジン作る知識も無い、河原の鬼からの又聞きじゃから。
灯油軽油は石油ランプを開発すれば、有意義に使えそう。
ABC重油は、町内の夜間照明、主要道路の篝火にでも使うか。
大量に発生するコールタールが、一番欲しい物。
タールで何か薬品が作れたはずじゃが、わしも全てを覚えておる訳じゃ無い、興味が沸かず聞き漏らした事の方が多いぞ。
其よりもアスファルトで舗装道路が作れる!
試験的に大陸中央道路をコロ達を使って拡張し、一部舗装中じゃ。
中央がわずかに高い、なだらかなアーチが、わりと難しくデコボコした仕上がりになる、少々の水溜まりが出来るのは技術的にしょうが無い、ブルもローラーカーも無く、全て手作業じゃから。高速道路じゃ無いし、スリップ事故など起こらんじゃろう。
数ヶ所に新設した、大規模酪農に大農園、予想通り順調に推移している。
ハム、ソーセージ、ベーコン等加工肉、小麦粉、精米、大麦等穀物、野菜に果物も神王国全土に供給されて居る。
漁業も造船から始め徐々に収穫量が増加、魚肉加工品蒲鉾にちくわ魚肉ソーセージ、其に各種干物が増産されている。
精製肉、鮮魚の輸送じゃが、保存技術に難があり、生産所近辺にしか出回らないのが今後の課題か!
昭和35年位の主流、塩漬けの肉や魚が流通して居るが、薄い塩水で戻す作業が面倒な上、しっかり時間をかけて戻してもかなり塩辛い。
わしが、氷雨凍結させれば良いのじゃが、神王自ら作業するのを、テレス達重鎮が許してくれんのじゃ。
「神術を使える者が増えるのを期待するしかないのぅ」
今まで無かった魔法が、直ぐに使えるように成る訳無いが。
氷雨使いを大量生産したいが、無理じゃろうな。
神術と言えば、カズマ家のタカダとジンそれに数人がカマイタチが使えるようになった。
今はかすり傷が、つくかつかんかと言った威力じゃ、要訓練じゃな。
一方ナオとテツの鬼火は、かなり強力になっておる。
残念じゃが、ライターの概念の無い他の者達は、鬼火が使えん、ろうそくの炎と言っても、ろうそくすら見た事が無い者が殆んど、氷雨使いはもっと指導が困難、火は兎も角、雨は自然なもので其を操るのは神にしかできんと思い込んでおるから·····。
ま、いつか誰かが使えるようになるじゃろう。
今日は森の熊さん、阿久田直家(アクダ-ナオイエ元アクダ皇帝のフルネームだそう)さんと領土最北端の更に北、氷に閉ざされた人跡未踏の地に向かっておる。
阿久田さんは、初代の戦国武将姿の肖像画を見た感じでは、400年以上前の日本から転移してきたと思われる、もっともこの世界で400年前とは限らんが。
肖像画に漢字で阿久田直家と書いて居るのに、ナオイエが、発音し辛いのか伝わった名はアクダ-ナオエ、以後正確にナオイエと名乗れと言い聞かせたが、漢字読みは日本語になるので発音出来ないようじゃ。
同じ日本人でも、此だけ時代を隔てると、神術は使えそうもない!バテレンの妖術使いとかの理解度じゃ無理。
ただ、中原3王と同じく、わしと行動を共にしておると神術を授かると信じておるようじゃ、氷雨と鬼火の凄さを目の当たりにして居るからのぅ、神術を修得したいのはわかる。
さて、万年雪に閉ざされたアルプス並の険しい山脈にたどり着いた。
大軍での雪山行軍は非常に難易度が高いゆえ、少数精鋭での探索に落ち着いた、残したメンバーは相当不服そうではあったが。
わしはコロに乗り、熊さんはヤンに乗っておる。
コロが群のボスのプライドから、熊さんを乗せるのを嫌がった為で、ヤンにはちょっと辛い目にあわせておる、すまん!!
ヤン自身は、最果て探索に同行できたのが誇らしく、ヤル気満々の様ではあるが。
最北端永久凍土の地域を抜け、山脈の麓にたどり着いたのは、中途半端な時間だった。
「どうしたもんか、すこしでも進むか?」
「マンバ神、夜営の準備をする方が良いと思います」
防寒の為着膨れした、本物の熊のような大男が控え目に進言する。
わしには此のまま進んで、適当な場所で夜営も、此処で野宿するのも其ほど違いは無いと思われるが。
「マンバ神山で吹雪かれたら夜営どころで無くなります、日が昇って様子を見ながら進み夜営に適した場所を見つけると、無理に進まず山の様子を見ます」
「慎重に登山しないと、生還は不可能です、山の天候は急変します」
わしは、裸で氷の上で寝ても全く問題無いが·····人間は不便じゃな。
熊さんの忠告を聞き、ここで夜営する事にした。
明けて快晴、山を眺め踏破方を考える。
雪山登山を楽しみに来たのではない、山向こうの探索に来たのじゃ、一部渓谷になって居る所を目指す。
凍りついた山を、難無くコロは進む、ヤンも重い熊さんを乗せながら力強く登って行く。
渓谷は両側から落ちて来た雪と氷で通行が困難に見えた。
「マンバ神これは·····断念して登山に変更しましょう」
「いや、待て」
少し高台に移動し、鬼火で渓谷底面を溶かす。
見る間に凍結してしまうが、平らな道路の出来上がり!
「神術とは凄い物ですな!!」
鬼火で溶かし、進んでは鬼火で溶かすを繰り返し、困難に見えた北の果て山脈を1日掛からず通過出来た。
新天地に夜営宿泊施設を架空袋から取り出し「少し飛んでこの先の様子を見て来る」
言い残し飛び立つ。
高く高く高度を上げる、視界は良好、白い大地が広がる。
「ありゃ?此処は大地じゃ無い、凍った海じゃった!!」
「凍った海を歩いて渡り、向こうの新大陸迄行けそうじゃ!!」
よく観察すると、この下には大陸間の列島があり、列島が架橋の働きをして流氷として流れて行かない氷、氷の架け橋が出来上がっておる。
新大陸、夜通し走る無理をすれば、直ぐに行ける··········
迷ったマンバだが、この場所で夜営し、早朝新大陸に向かう事にした。
行け進め!のマンバとしては珍しい行為だったが、無意識に最善の判断をした事を、すぐに思い知ることになる。
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