第4話
三人はトーラスタワーの中を調査している。トーラスタワーに送信されたデータはトーラスの中、正確には地下の割り振られている区画に送られている。そしてこの世界ではデータの動きも直接目で見ることも出来る。データの形はわかりやすく四角だったり丸だったりと色々なタイプがある。このミッションは侵入したウイルスを地下の区画に入る前に駆除するというのが内容になっていた。初心者でも可能と判断され、チュートリアルミッションに指定されている。
タワーの深部に近づくにつれ、データの塊が多くなっていて、ウイルスが紛れている可能性があった。
「地下に異常の報告が無いなら、近くにいるはずだ。まだタワー本体のセキュリティーが効いてウイルスが足止めされているはずだ。だが、いつまでも保たない。D級ミッションでも油断禁物だ」
新藤が注意深く辺りを見回しながら涼太に言う。
『そろそろセキュリティーのある付近です。もうすぐ、遭遇します。気をつけてください!』
涼太に敵が近いと警告する。しかし、AI347号は武器を出さないし新藤も同じである。それは涼太に与えられたミッションだからである。二人が手を出しては意味が無いということである。
敵が近いと言われた涼太は銃を再び発現させる。
「こんな感じか!やっと慣れてきたわ」
入り口からここに来るまで武器の出し入れの練習を数回していた。そして、攻撃しているような音が聞こえてくる。その正体はアメーバ状でねずみ型のウイルスで小さいサイズである。セキュリティーにアタックしているところだった。
「ここまで紛れこんでいたか!見直しだな」
新藤が言ったのはセキュリティーの見直しが必要だということを言った。
『あなたでも駆除出来る程度です』
涼太はウイルスに照準を合わせた。定まったことで引き金を引いてみるが、気づかれ逃げられる。小さい為、すばしっこいのでつかまらない。
「宍倉くん。あのテストの感覚を思い出せ!」
「あれか!」
涼太はこのとんでもバイトのテストの時を思い出した。そして、落ち着いて音を出さないようにゆっくりと、ウイルスに照準を合わせようとするが、すばしっこく動く為、簡単に引き金が引けないのが現状だった。涼太の銃に込められている弾は弱いウイルスを撃ち抜くと、消滅させられる。
「!?」
動き回っていたウイルスが一瞬、止まった。それに気づいた涼太は見逃さず、完全に照準を合わせた。
パンパーン
二発の銃声が鳴り響いた。ウイルスを見ると、消滅し姿・形が無くなっている。
『ファーストミッションクリアです。初めてにしては中々で久しぶりでした』
「ステータスを見てみろ!この調子でミッションをこなしていけばレベルが上がっていく」
ステータスを見るため「”ソルジャーコマンド”」と強く意識して、ステータス画面で個体能力を開くと、レベルゲージは変化していた。
B Level 13
基礎レベルが3上がった。そして、それからも似たようなミッションをこなしていく。テリトリーに侵入したレベルの低いウイルスを退治したり、サーバーの状態を調査するという雑用もする。雑用も経験も低いがレベルアップのポイントに繋がったりもする。涼太のレベルは順調に上がっている。AI347号の場面に応じたアドバイスのおかげであることも大きい要因だった。自分のステータスを見てレベルの上がっていることを確認した涼太の表情はニコニコしていた。
「お前の名前思い付いた。”ミシナ”って呼ぶわ!」
D級ミッションをいくつかこなして、レベルアップした直後にノーマルトーラスの表面を歩いている時に突如、顔を向けて言い出した。
『番号呼びでも構わないのですが、宍倉涼太さんがそうしたいのならば・・・』
「あのさー。さっきも言ったっしょ!フルネームでいちいち呼ばれるのもうざい。”涼太”でいいから」
ある意味似たようなことを言っているような二人だったが、AI347号の方が折れる。
『わかりました。涼太さんと呼ばせて頂きます』
「まぁー、いいか。もうー!」
ミシナに対して、まだ思う所はあったが、AI特有の固さについて少しはマシになったので今はそれ以上のことは言わないことにしようと思った。そして、前触れも無く通信が突然入ると涼太は出ようとする。
”隊長”
新藤からの通信を表している。ミッションの様子を伺ってきたのだろうと涼太は思い、通信を開いた。
「もしもし、宍倉っすけど。今、ミッション終わりました。で、何すか?」
「ああ。こちらでも確認した。だから、君にかけた。今日は先輩を紹介する。君のいるノーマルトーラスに連れていくから待機しててくれ」
涼太には先輩が来ると聞いて気になることがあったので新藤に聞いてみることにした。それは単純なものであった。
「その先輩って男・女どっちすか?」
「そうだな・・・。いいことを思いついた!この通信を切ったら目を瞑ってくれ。俺が声をかけるまでだ。先輩の方もやってもらう」
何かを思惑があるのか新藤はサプライズ的な企画を両者に持ち込んできた。涼太は面白そうだと思ったので了解した。新藤との通信を切って、今のことをミシナに説明すると、ミシナは少しも微動だにしなかった。やがて、何かが終わったのかミシナはあることを言う。
『涼太さんに言ったことに基づき、確認しましたら・・・後はお楽しみです』
気になる言い回しが気になったが新藤の言った通りに目を瞑ることにする。しばらくして、複数の足音がこちらに近づいてくる。目を開けたくなるところだがそこは我慢をする。足音がものすごく近づいたかと思ったら急に止まった。もう目の前にいるのだろうということがわかる。
「待たせたな。まだ、開けるなよ。二人共!」
二人の距離は近く向かい合っている状況になって、目を瞑っていることを新藤は確認した。
「目をゆっくりと開けてみろ。ゆっくりだぞ!」
新藤の言われた通りに従いゆっくりと目を開けていく。涼太はその隙間からシルエットが見えて髪が長いことから女性であることがわかった。
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