ショートショート リケ女
今本豊明
賛成
彼女は化学会社に勤める研究員だ。
研究一筋、他のことなど無頓着だ。
同年代の女性と比べても、お世辞にもオシャレとは言い難く、いつも地味な色のスーツに
分厚い眼鏡、化粧もせずに髪もボサボサである。
そんな彼女のバックには当然あぶらとり紙や化粧道具など入っておらず、リトマス紙を持ち歩いているのがなんとも理系の彼女らしいと思わずにはいられない。
ある日私は彼女を喫茶店へと誘った。
窓際の席に着きオーダーを告げる。
私はホットコーヒーを、彼女はレモンティーをオーダーした。
会話もなくお互いの飲み物だけが減ってゆく。
私は意を決して彼女に告げた
「私と結婚を前提として付き合ってください!」
分厚い眼鏡の奥の表情は読み取れない。
彼女はおもむろにバックから青色リトマス紙を取り出した。
私は意味が分からずじっと見つめていた。
彼女はその青色リトマス紙にレモンティーに添えられた輪切りのレモンの汁を垂らした。
青色リトマス紙は赤色に変化していく・・・
それは「さんせい」の証だった
ショートショート リケ女 今本豊明 @dasaiossan
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