アユム
ー月曜日ー
ピコンという音で目が覚めた。
『おはよう。これから登校するね』
アユムからだった。
時計を見ると8時を回っていた。
目覚まし時計をセットし忘れていた!
聞きたいことはいっぱいあるが、遅刻ギリギリだ!急いで行かなきゃ。
なんでこんなときにママ達居ないのー?
両親は早朝出勤ですでに居なかった。
急いで走って学校に着くとアユムの姿があった。リサもすでに来ている。
「おはよう、アユム!もう、大丈夫なの?!」
抱きつきながら言うと
「ごめんね、心配かけて」と苦しそうにアユムが言う。
クラスメイトは何があったのかわからないので、みんなの注目の的となった。
慌ててアユムから離れると、自分の席に座る。
先に席についてたリサから挨拶される。
「おはよう、リサ」
「アユム、元気になって良かったよね」
リサはうなずく。
でも、なんとなく違和感がある・・・。
アユムは人一倍恥ずかしがり屋なのに、大野くんと一緒にいる。男子と一緒に話すことなんてしていなかったのに・・・、なんだろうこの違和感。
それにアユム変わった。普段はメガネなのに今日はコンタクトしている。
メガネでも知的な美少女という感じだが、コンタクトにするとますますキレイだ。
「アユム、雰囲気変わったね」
「なんか、あぁいう風に見ると大野くんとユリがいるみたい」
リサは懐かしそうに言う。
ユリは大野くんにまだ未練あるんじゃないかな。それで大野くんの名前を出したのかも。
警察の取り調べとか受けてて結構病んじゃったみたいで、一時期は暗かった大野くんも元気になった。
担任が予鈴と共に来た。
「授業始めるぞー!」
机の中から教科書とノートを出した。
携帯を制服のポケットにしまう。
机の上に置いておいたら没収されてしまうからだ。
ふと、アユムを見ると後ろ姿がユリに見えた。その瞬間、体が動かなくなった!周りは気づいてない!!
アユムが私の方をゆっくりと振り向く。小さな悲鳴は誰にも届かない。
ユリの顔がハッキリと見えた瞬間、椅子から落ち、その衝撃で金縛りもとけた。
「おい!大丈夫か!?」
担任の鈴木先生が駆け寄る。
「ユリが・・・ユリがあそこに」とアユムの方を指す。
「大丈夫か!?あの席は神埼アユムが座ってるんだぞ。夢でも見たか?」
確かにアユムが座ってて、ユリの席は別の席だ。
みんなに爆笑されてしまった。
こっちは怖い思いしたのに・・・、しかも落ちた衝撃で手首を少し捻ってしまった。
「誰か保健室へ連れていってやれ!」
保健委員はリサだった。
2人は廊下に出て保健室に行く途中、今起きた出来事をリサに話した。
「それが本当だとしたら何が伝えたいんだろう?」腕を組ながら考えるリサ。
「本当だよ!見たんだもん、しっかりと」
捻った手首をかばいながら歩くマナ。
保健室で手当てをしてもらい教室に戻ることになった。
ユリと今のアユムって似てない?
私だけだろうか、そう思うのは。
髪型も似てるし、顔つきだって!
双子とまではいかないけど、なんか気になるなぁ。
帰りにリサと一緒にユリの家に行こうかな。
「リサ、帰りにユリの家に行かない?」
「えっ?少し遠いよ」
「お線香もあげたいしさ」
「そうだね・・・、アユムにも伝えておく」
教室に戻りながら廊下を歩く2人。
授業を受け終わるとすぐにユリの家に向かった。学校から1時間のところにあるユリの家は繁華街が近くにあるところだった。
住宅街に住む私達より賑やかな場所だ。
アユムを誘ったら大野くんもついてくると言っていた。
マンションのチャイムを鳴らすと女性の声がした。
ガチャっと音がして、住人の顔が見えた。
「いらっしゃい、リサちゃん・・・アユムちゃん?久し振りね、まぁこんなに大勢で来てくれてユリも喜ぶわ」
笑うとエクボができる母親の姿がそこにある。
通されたリビングにはユリの写真が飾ってある。仏壇は小さなものだったが、ユリが好きそうなお花等が飾られている。
「大野くんも大変だったでしょう、警察の事情聴取とか・・・・」
ユリの母親が言うと
「結構キツかったですね・・・」大野くんが応える。
「形見分けしなきゃと思っていたけど、おばさんちょっとまだ出来なくてね。ユリが死んだのは嘘なんじゃないかってねぇ・・・。落ち着いたらユリの部屋のもので良かったら見ていってね」
そう言い残すと鼻をすすりながらリビングからキッチンへ行ってしまった。
「俺はユリの写真がいいかな、ペアリングはユリに持っていてもらおう」
「あたしはユリの帽子」リサは大事そうに袋にしまう。
「私はこれ」マナはシュシュを手に取る。
「わたしは・・・ロケットペンダントもらうね」アユムは首にペンダントをかけた。
ユリの母親に何を持っていくかを言い、マンションを出た。
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