閑話02 忌々しい!
クラン会合が終わった後。
フレーダーマウスのクランマスターを務める男テオドシウスと、ドラゴンバスターのクランマスターを務めている男カリオン、その2人が冒険者ギルドの会議室を出た後に再び集まって密談を行っていた。とある場所の地下、外からの光も入らないように締め切った密室で、2人のギルドマスター以外には誰も居ないような部屋の中。
彼等が会話する内容は、先ほどの会合での戦乙女クランのクランマスターであったレオノールの態度について、それからモンスターの突然変異に関してだった。
「あぁ、忌々しい!」
「何なのだ、あの女の態度は」
腹を立てながら大声で喚くカリオン、呟くように言葉を吐き出したテオドシウス。ふたりは、恨めしいという感情を言葉を口に出して発散していた。もともと攻撃的な態度をとったのは彼等が先だったけれども、その時の記憶は都合よく頭の中から消し去って、反抗された時の事だけを憶えていてレオノールを批判していた。
相手を悪く言う為だけに、彼等の思考は働いていた。反省しようと少しも思わないから、彼等の態度が改まることは無い。
どんどんと女性を見下すという考え方が強くなり、男子禁制というルールを掲げる女性冒険者集団である戦乙女クランを目の敵にして、憎しみや蔑みが止まらない。
彼等は、戦乙女クランに対して自分たちよりも総合的な実力は下だと思っていた。ドラゴンバスター、フレーダーマウスの二大クランの方が歴史もあり、所属しているメンバー数も多いし、実力が上だろうと確信していた。
それなのに最近は戦乙女クランの方が世間では人気があり有名で、活躍していると思われている。活動についても評判が良いらしくて、実力が下だと思っている組織が際立った仕事ぶりをしていると聞いて、嫉妬して憎しみを増大させていた。
「ふん、まぁいい。今回、我々が要請された王国からの依頼を遂行すれば、今の異常な状況もいずれ正常に戻るだろう」
「奴らは愚かにも依頼を拒否しましたからね。おそらく、依頼を達成する自信が無かったのでしょうな」
女の冒険者だけしかいない戦乙女クランが躍進を遂げているのは、今の状況が異常だからなのだと考えていた。
そんな彼らは、今回の王国からの魔核に関する依頼を遂行することで状況が変わると考えていた。そして、自分達が依頼を達成できると信じて疑わなかった。そんなに自信満々になれるのには理由がある。
「もう既に、我々は幾つか魔核のある場所を把握できている。ちょうどいい時期に、ちょうどいいタイミングで王国が動いてくれた。運は我らの方に向いているな」
そう言って、笑顔を浮かべるフレーダーマウスのクランマスター。会合中に話さなかった、隠していた情報。
彼等も伊達にクランマスターという立場に居るワケでなく、モンスターが突然変異している現象について以前から目をつけていた。そして、原因調査を行うパーティーを各地に派遣していた。
そんな調査の結果、魔核という原因を突き止めていて魔核がある場所も既に把握をしていた。そんなタイミングで、クラン会合に集められて、王国から出された依頼の内容を聞くことが出来たから。自分たちにも幸運が舞い込んでいると感じていた。
「発見したという情報を報告するだけでも、アレだけの報酬が出してくれるのだからな。魔核を持ち帰れば更に追加の報酬だ。王国は兵士を派遣するのではなく、冒険者クランに依頼を出してあれ程の大金を放出をして養成してきている。王国は、よほど困っているようだな」
先ほどの話から現状を予想して王国に頼られているんだと感じ、ドラゴンバスターのクランマスターも笑みを浮かべた。
「そんなに困っている事態を我々が早期解決すれば、クランの名を上げる良い機会となるだろう」
「そうですな」
「戦乙女クランは今回、王国の危機という場面で手助けしなかった。この事実により世間の評判も悪くなるだろう」
「今まで間違っていた世間の評価が、正常に戻るでしょう。もう、王都三大クランの一つに含まれるという誤りも正されるでしょう」
そして、評判を得て有名になっている戦乙女クランの人気を追い越して、再び自分たちが上の立つ瞬間がやって来る。そんなバラ色の未来を妄想していた。
早速、フレーダーマウスとドラゴンバスターのクランは戦乙女クランを蹴落とす為に協力した。
クランに所属しているメンバーを編成して、いくつかのパーティーを組んで、既に発見している魔核を王都に持ち帰ってくるように指示を出していった。魔核を特区の昔に発見している、という情報はまだ王国側に報告せず秘密裏に二つのクランは行動を開始した。
魔核の回収は他のクランには情報を開示せず内々に活動をして、魔核のある場所も当然、誰にも知らせず2つのクラン内だけで情報共有をしていた。フレーダーマウスとドラゴンバスターのクランだけで全ての処理しようと、功績を全て自分たちだけで独占しようと考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます