第11話 煙が上がってる?

 魔核という存在。


 最近モンスターの突然変異が増加していて、討伐依頼が増えていた。それには原因があったんだとクラン会合で周知されて、王国からは各クランに魔核の捜索と回収が依頼されることになった。


 依頼達成の報酬はかなり高いようで、発見した物を破壊して報告するだけでも報酬を受け取ることが出来るらしい。魔核をそのまま持ち帰ることができれば、更に報酬がアップするという。


 魔核に関する情報を惜しげもなく各クランに共有して、依頼を成功したら高額報酬まで支払ってくれる。つまり王国にとって、それほど緊急を要する事態なのだという事が分かった。


 しかし戦乙女クランのマスターであるレオノールは、今回の出来事に積極的に関与しないという考えで行動する事になった。僕たち戦乙女クランのメンバーは、クランマスターの方針に従って魔核の捜索は行わずに、冒険者ギルドに集まってくる通常の依頼をこなしていく毎日を過ごしていた。


 王都に拠点を置いている他のクランは、気合を入れて魔核の捜索活動を行っているようだった。王国からの依頼を無事に達成して、名を上げるために。


 あの場所は捜索したが発見できなかった、あそこで目撃情報が有った、あの場所が怪しそうだぞ、というような魔核情報についてクラン同士で盛んに情報交換しているようだった。


 特に、戦乙女クランを目の敵にしているフレーダーマウスとドラゴンバスター2つのクランは、数あるクランの中でも一番だと言えるくらい活発に魔核捜索を行っているようだった。所属するクランメンバー全員を、魔核の捜索に稼働させる勢い。


 ドラゴンバスターのクランメンバー達は王都を離れて、色々な方面に魔核の捜索へと向かった。聞いた噂によれば、もう既に魔核を幾つも発見していて、いま動かして見せている人員は囮である。極秘で動いている数組のパーティーが既に魔核を王都へ持ち帰る準備をしている、とか何とか。


 そんな話が聞こえてきても、戦乙女クランだけ我関せずという風に平常通りの活動を続けていた。むしろ、皆が魔核の捜索で必死になっている最中、王都周辺で増えてきた通常モンスターの討伐やら、街道を占拠して邪魔になっている突然変異した強力なモンスターの討伐といった依頼が舞い込んできて通常よりも忙しくなり、依頼処理に追われる状況となっていた。



***



「ギル様、討伐を完了しました!」

「うん、お疲れ様」


 いま僕は、後輩を連れて王都付近にある森にやって来ていた。凶暴なモンスターが生息する森のなかで討伐依頼をこなしながら、彼女たちの戦闘指導中である。


「戦いが終わっても気を抜かないように。もっと、周囲を警戒して。モンスターからの奇襲を受けないようにね」

「「「はい!」」」


 今の僕は指導役として、彼女達の戦闘には参加せず観察を続けて、コーチしている最中だった。


 是非とも彼女達には、冒険者として大きく成長してもらいたい。僕が戦乙女クランに所属し続ける必要が無くなるぐらい、僕が戦乙女クランから脱退するための代わりとなる人物になってもらいたい、という密かな願いを胸に抱きながら熱心に彼女達を指導していく。


「周辺に敵影は?」

「ありません」


「倒したモンスターの素材回収は?」

「終わりました」


「よし、それじゃあ依頼は完了。拠点に戻ろうか」

「了解しました」


 素直に指導を受けてくれる優秀な後輩たちが、危なげなく依頼を完了させてくれたので今日の訓練も終わりにする。


 後輩たちを後に引き連れ皆で拠点に帰る。幸い、帰りの道中ではモンスターと遭遇することなくスムーズに帰ってこれたと思った。けれど、緊急事態は最後に訪れた。戦乙女クランの拠点がある王都へと到着する直前、僕はある異変に気付いた。


「ん? あれは……。街中で煙が上がってる?」


 王都から遠く離れた場所からでも見えるぐらい、明らかに街中から黒い煙が複数の箇所で上がっているのを発見した。何やら不穏な空気も感じて、王都内で問題が起こっているのが分かった。急いで拠点に帰還しないと!

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