第19話 助っ人?
僕は再びクラン脱退を訴えたが、それなら自分も辞めると言い出したレオノールの強引な提案によって、今回は仕方なく脱退については撤回した。そうしないと、彼女も一緒に戦乙女クランを抜け出すなんて言い出したので。
これから魔核問題を解決する為に、王国からの任務を受けて戦乙女クランは今よりずっと忙しくなりそうだった。そんな時期に、クランメンバーの皆を見捨てて遠くへ行ったとしても未練が残りそうだったし、コレで良かったのだろう。兎にも角にも、僕が戦乙女クランから脱退するのは当分先の事になりそうだった。
***
「それじゃあ、後は任せる」
「いってらっしゃい」
レオノールは仲間を引き連れて、魔核捜索の為の遠征に出ていった。彼女を見送る僕は、戦乙女クランの拠点を任されて留守番をすることになった。
なるべく、男性に悪影響があるという魔核に近づかないよう拠点で待機していた。魔核捜索には出ず拠点に籠もって仕事をしている。
王国から依頼された魔核の処理、という任務を果たすためにクランマスターであるレオノールが先頭に立って働いていた。それに対して、僕は連日拠点で待機しているだけ。クランメンバーから、不審がられるかも知れないと気をつけていたけれども、意外と何とも思われていないようだった。
むしろ、落ち着き無く外へ何度も出ていくレオノールの後処理をするために拠点に籠もって仕事をしている、と思われているようで毎日大変そうだと同情の目で見られていた。
ともかく、拠点に籠もっている僕でも魔核の問題解決を少しでも手助けしようと、情報を集めて整理し、まとめるという仕事をしていた。
人から伝わってきた噂の選別、最近おかしな現象が起こっている地域の話、魔核だろうと思われる紫色の石を目撃した情報、等など。モンスターが突然変異を起こした場所を記録した情報を整理して、魔核のある場所を予想していく。そして、クランのメンバーを各地に派遣する指揮を執っていた。
魔核捜索の依頼は戦乙女クランだけで仕事を独占するのではなく、王都にある他のクランにも協力をお願いして、事に当たっていた。
他のクランにも協力してもらい、多くの人を使って人海戦術によって魔核に関する情報を各地から次々と集めていく。実地調査や魔核を破壊する作業は、戦乙女クランに所属している女性冒険者が請け負って、送り込まれた彼女たちは魔核を発見次第、次々と破壊していく。
王国全土にあるかもしれない魔核を探す長い作業を、少しずつでも効率的に行えるように。拠点に籠もって情報を精査して皆に指示を出しながら、実際に魔核と対峙をする者たちを間接的に手助けしていった。
僕は拠点に籠もりながら他のクランと協力して情報を集めて、レオノール達は外へと遠征に行って魔核を破壊していく。周りからは不審がられない役割分担も出来て、魔核処理の仕事について大分効率的に処理できていた。まだ全てを片付けるのには、時間は掛かりそうだったが。
戦乙女クランのメンバー皆が必死に魔核問題を解決するために働いていた。そんなある日の事、クラリスは王国からの伝言を持って来た。
「ギル様。王国から、今回の魔核問題を解決するための助っ人を派遣すると」
「助っ人?」
何も聞かされていなかった僕は、王国からの急な話に驚く。魔核処理に関しては、今は状況が安定しているので、手助けが必要だという要請なんか出していないが。
王国から伝えられた話を報告をしに来てくれたクラリスも、困惑したというような表情を浮かべている。彼女も王国からの急な話、助っ人という人物について不思議に思っているようだ。
「王国が派遣すると言っているのが、巷で勇者と呼ばれている者がリーダーを務めている冒険者の一行だそうです」
「勇者のパーティー? なんとなく話は聞いたことあるけど」
王国はなぜ、今のタイミングでそんな急に助っ人なんて寄越そうとしているのか。しかも、勇者なんて厄介そうな人物。勇者について、活躍しているという噂を少しは聞いたことがある。けれど、そんなに詳しくは知らなかった。
面倒な人物じゃないといいんだけれど。
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