第17話 問題なのは
王国から指名されての依頼内容。王都に運び込まれた魔核が他にも無いか調査して処理する事、それから今回魔核が発見されたところ以外にも他の場所に魔核が残っていないかどうか、捜索して見つけ出したら破壊していくという仕事。
魔核の処理については手間が掛かりそうで大変そうな仕事ではあるものの、強力なモンスターを討伐したり、高貴な人物の護衛任務に比べると難易度は低いだろうな。ただ、探し出すという地道な作業が多く有るだけ。人員が多く必要そうだった。
今回の依頼をこなすと、作業した分の報酬が用意されているらしい。魔核を見つけ出す事が出来なかったとしても手数をかけた事に対する報酬として、人員を稼働した分の手数料が支払われる約束になっているという。それだけ、王国が戦乙女クランに働きを期待している、ということか。
ただ、僕にとって大きな問題が一つある。
「やっぱり、問題なのはギルの性別だな」
「魔核の特性が本当なら、僕が近づくのもダメそうだよね」
今回の騒動によって発覚した魔核の特性。男性は近づくと強く影響を受けて精神のバランスを崩し、正気を失ってしまうというもの。女性の場合には、魔核に近づくと具合いを悪くするらしいが正気を失うほどではない、らしい。
現に、ドラゴンバスターのクラン拠点に魔核が運び込まれた時、その拠点に魔核を運び込んだ男性冒険者達、そして、その拠点に居た男性らは全員が正気を失っていたらしいが、所属していた女性冒険者の数名は正気を失わず拠点から逃げ出す事に成功していたらしい。
正気を失ったドラゴンバスターのクランメンバー達の鎮圧に向かったレオノール達も魔核を目の前にして、体調を悪くさせることは有っても変化はそれぐらいで、正気を失うことは無かったという。
なぜ、男性だけが少気を失い暴走するなんて影響を受けてしまうのか。今のところ原因は不明だった。けれども、事実として魔核に近付いてしまった男性たちは正気を失っているという。
性別が男である僕も、魔核には極力近づかない方がいいだろう。しかし、これから戦乙女クランの引き受けた任務を遂行するためには、そういう訳にはいかない。そこが大きな問題だった。
「やっぱり、僕は戦乙女クランを脱退したほうがいいと思う」
「ダメだ」
これから先、誤魔化し続けるのも困難だろうと思う。一番の解決策は、バレる前に僕が戦乙女クランから去ることだと思う。だが、レオノールは速攻で却下した。
「どうして? 僕は今回の任務に参加することは出来そうにない。王国から命じられた大事な任務なのに。任務に全く参加しない僕は皆に不審に思われて、そこから性別がバレてしまうかもしれないよ」
今まで性別を隠して過ごしてきた、戦乙女クランでの日々。何とか隠し続けてこれたけれど、今回こそはダメそうだった。もし僕が男だったとバレてしまえば、彼女達は怒るだろう。それが恐怖だった。
「皆にはバレないように、魔核に関する仕事をしないでいいよう私が細工する」
「そこまで面倒な事をするのならば、僕をクランから追放してくれたほうが早いし、面倒なことをしなくて済む」
「いや、ん……」
所属し続けるにはリスクが大きすぎる、だから追放してくれと僕は言った。それに今回は男だとバレるかも知れない危険よりも、レオノールの手を煩わせるという事も嫌だったから。
眉をひそめ腕を組んで、悩み続ける彼女。何とか解決方法を考え出そうとしているが、今回こそは脱退の他に選択肢はなさそうだった。
戦乙女クランを抜けたら、僕は王都から遠く離れた場所へ行こうと計画してみる。この辺りには僕の事を女性だと思っている人達が多いし、脱退した後にも性別がバレないようにしないといけない。だから、出来る限り離れた場所に行って僕の事を何も知らない人達が住む場所で、今度はちゃんと男として新生活を始めようと思い描いてみた。
「ギルがそうするのなら、私にも考えがある」
「え?」
戦乙女クランを抜けた後の新しい生活について思いを馳せていると、レオノールがとんでもない提案をしてきた。
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