第16話 昨日の話は聞いてるか?

 ドラゴンバスターとフレーダーマウス、2つのクランが起こした王都での騒動は、正気を失って暴れていた彼等クランメンバーが全員捕縛されて、王都に持ち込まれた魔核の破壊が完了すると、街中は一応の落ち着きを取り戻していた。主にレオノールが指示を出して鎮圧にあたっていた。その間、僕は戦乙女クランの拠点の防衛の仕事をしていた。


 一日経過して翌日の朝になった時、事件の詳細についてまとめた情報をクラリスが報告しに来てくれて、その後の話を聞いて騒動の内容はおおよそ把握する事が出来ていた。一段落させて拠点に戻ってきたレオノールに呼び出された僕は、彼女の執務室にやって来ていた。


「来たよ、レオノール」

「ギル、昨日の話は聞いてるか?」


 部屋に入るとレオノールはすぐさま本題へ入って会話を始めた。部屋の中には僕と彼女の二人だけ。そして話の内容は、昨日の事件についてだった。


 昨日はその後、レオノールが拠点には戻ってこなかったから、顔を合わせる機会がなかった。彼女は、早朝も拠点には居なかった。いつの間に戻ってきていたのか呼び出しを受けて会うことに。レオノールは、どうやら昨日から働き詰めなのか疲れ気味という表情を浮かべている。


「一応、クラリスから内容は報告を受けたよ」

「なら今回の魔核問題について王国から直接、事件解決の依頼をされた事についても知っているか?」


 たしか、その話も聞いていた。クラリスからの報告について思い出しながら答えていく。


「それも昨日、クラリスが言っていたのを聞いてるよ。もしかしたら魔核処理は我々戦乙女クランに任される仕事になりそうです、って言っていた。その任務を引き受けるのは決定事項なの?」


 昨日の今日で既に依頼が出されて、僕たちのクランが処理を引き受ける、と決定したのかと早い展開に驚きながら僕が尋ねると、彼女は眉をひそめて腕を組み、不本意だというような表情を浮かべて答えた。


「王国から直々の依頼だから、今回は断れなかったよ。本当はね、魔核という物には極力関わらない方がいいと私は思うんだけれど。それに、他に引き受けられるようなクランも無くなってしまったから」


 今回の出来事を王国は非常に重く見いているのだろう、迅速な行動によって依頼を出してきた。そして王国から直接お願いされてしまった今回の依頼について、今回は断れなかったと語る。だが彼女は、その依頼を受けないほうがいいと考えているようだったけれど。


「それに戦乙女クランは女性冒険者しか所属していない、けれども所属するメンバーの数は結構いる。ってなると、今回の魔核問題の処理に打って付けって事だからね。王国からも働きを期待されていたよ」


 なるほどと僕は納得する。魔核の特性を知れた今、なぜ魔核が男性のみに限定して正気を失わせるのか分からないけれども、原因が分からない今は女性冒険者が処理するのが得策だと思う。そして女性冒険者が多くいる戦乙女クランを頼るというのは、理解できる流れだ。


 そして、もう一つ話を聞いていて気になった点がある。それは依頼を引き受けられるようなクランが無くなってしまった、とレオノールが口にした言葉について。僕は尋ねた。


「やっぱり、今回の騒動を引き起こした張本人であるクランは解体されるのかな?」


 彼らは正気を失いながら、王都の各場所を襲撃して被害を与えていった。ドラゴンバスターにフレーダーマウス、2つのクランメンバー達が魔核によって狂わせられての行動。とはいえ、彼等が色々な場所に襲撃を行ったのは事実。そんな彼等に課せられる罰は、いったいどんなものなのだろうか。


 かなり厳しい罰を課せられるのではないか、と僕は予想していた。実際はどうなるだろうか。

 

「今回の事件によって大手クランとも言われていた2つのクランは、どちらも解体処分される、ってことが決定したよ。ドラゴンバスターにフレーダーマウスは無くなるって事だ」

「なるほどね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る