第15話 応援に行きましょう

 クラリスは、魔核という物が今回の騒動の原因だと語った。そして、魔核に関して説明してくれた。特に男性に悪い影響を与える、という話を聞いて僕の心臓は大きく脈打った。つまり、男だという性別を隠している僕にも効くという事。


 横に立っているティナは知っている事実だけれど、目の前に立っているクラリスは知らない。


「幸いなことに我々のような女性に対しては比較的影響が小さい、ということが確認されています。確定ではないのですが王国から依頼されて今後の魔核処理については我々、戦乙女クランに任される任務になりそうです」

「あ、あぁ。うん、なるほど、そうなのか」


 魔核が何故か男性に対して大きく影響して、女性には影響が小さい事が判明した。だから女性の冒険者だけで構成されている戦乙女クランが適任だと僕も思う。性別が男である、僕以外のメンバーには合っているだろう。


「それから、まだ向こうでの後処理が終わっていないので拠点から誰か応援を呼んでくるようにと、レオノール様に言われて来ました」

「後処理?」

「ドラゴンバスターの拠点に持ち込まれた魔核の処理、だそうです。王都に運び込まれた物は完全に破壊するようにと、レオノール様が働いています」


 僕はクラリスの言葉を聞いて緊張して、身体が固くなるのを感じた。つまり魔核はまだ近くに残っていて、破壊するという作業がある。もしも僕が現場に行ったなら、どんな事になってしまうのか想像をして、最悪の事態を思い浮かべてしまう。


「それじゃあ、私がレオノール様の応援に行くよ! ギルは、拠点の防衛をお願い」

「う、うん。ありがとう、拠点防衛は任せて!」


「え、えぇ。そうですね。レオノール様からも、ティナを連れてくるように指示されていたから。ギル様には、拠点を任せて来るようにと言われていたので丁度いいわ。ギル様が拠点防衛をしてくれる、というのなら安心です。ティナ! 何人かメンバーを連れて、急ぎレオノール様の方へ応援に行きましょう」

「うん。急いで行こうか」


 今まで黙って僕の側に立ちながら、一緒になってクラリスの話を真剣に聞いていたティナが先んじて、手を挙げ主張をする。クラリスは急に手を挙げたティナの突然な行動に驚きつつも納得して、役割を分担していく。


 ティナは僕の性別についてを知っている。急に主張したのも今の話を聞いていて、僕を魔核に近づかせないように配慮して、手を挙げてくれたようだった。どうやら、レオノールも気を回して先に指示を出してくれていたらしい。やはりレオノールも、魔核と僕の反応を危惧して近づかないように気を配ってくれて、拠点は任せる、と言ってくれていたようだった。


「それじゃあ、早速行こう!」

「彼女たちを連れて行きましょう。ギル様、後は任せます」


 何人かのメンバーに出撃準備の指示を出して、これから戦いに向かう準備をさせるクラリス。


「わかった、行ってらっしゃい。気をつけて」


 クラリスとティナ、そして10人のクランメンバーを引き連れ拠点から出発する。レオノールの応援に行った彼女たち。そんな彼女たちを見送ってから、僕はひとまず安心した。


 大変なことになった。ドラゴンバスターとフレーダーマウスという2つのクランが王都で暴れて騒動を起こした事もそうだ。特に今回は、魔核という危険な物が現れたこと。


 しかも、男性にだけ強く悪影響を及ぼすという事なので、僕は近づけないと思う。なのに、僕が所属している戦乙女クランは女性の冒険者だけの集まり。魔核の問題に対処する為のチームとして適任だと思えた。僕以外は。


 男だという性別を隠しながら男子禁制のクランである戦乙女に所属している僕は、これから魔核問題に対してどう立ち向かうべきか、と頭を悩ませる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る