第6話 美味しく頂いてます
モンスターの討伐依頼を遂行して無事に目的が完了した後。キャイキャイと楽しそうにしている女性メンバーへ街に到着するまでは気を引き締めるよう注意しながら、戦乙女クランの拠点に戻ってきた。
「おかえりなさいませ、ギル様」
「ありがとう、依頼は無事に達成してきたよ」
「ご苦労さまです」
拠点で出迎えてくれたクラリスに今回の成果報告をする。彼女が後でまとめてから冒険者ギルドに報告してくれるので、非常に助かる。
その他、任務に同行したクランメンバーとの反省会をしたりする。今回は、みんな素直に指示を聞いてくれて特に問題もなかったので、反省するような点は特に無い。だから良かったと、同行したメンバーたちを褒めておく。
「やった! ギルさんに褒めてもらえた」
「良かったね皆」
「私、仲間に自慢しちゃうもんね」
「……」
喜び合うメンバー、そんな中に1名だけ何か待ち構えている者が居たので彼女には個別でアドバイスをしておく。
「エレーナ、君はクランの中でも一番に近い筋力の持ち主のようだし、大斧の扱いも慣れていて良かった。今後は、どんどんと前線に出て戦うことになるだろうから少し自己主張を強く、積極的に戦いへ参加していければ更に良くなると思う」
「はい……!」
今回の依頼に同行したメンバーの中では飛び抜けて戦闘能力の高かったエレーナ。これから先、成長したら戦乙女クランの主力メンバーに成り得る人材だと感じたので、彼女に向けたアドバイスをしておいた。僕の言葉を黙ったまま、口元は嬉しそうにしつつ熱心に聞いてくれたエレーナ。ぜひ頑張ってほしいと思う。
「良かったね、エレーナ! ギルさんに目を掛けてもらってるよ」
「流石だ。仲間として誇らしいよ」
「頑張ってね、応援してる」
「……ありがとう、みんな」
エレーナが女子たちに褒め称えられていた。どうやら仲間にも慕われているようで良かった。
「じゃあ、今日は解散。疲れを残さないように、ちゃんと休んでね」
「「「「はい!」」」」
こうして依頼の後処理が終わり、ようやく今日の仕事が全て完了となる。
仕事が終われば、まず僕は食事をする。戦乙女クラン拠点の中には食堂があって、行けばいつでも美味しい料理が用意されている。それを食べるのが楽しみで、夕食をとると1日が終わったと感じる瞬間であった。
「ソニアさん、今日の晩ごはんは?」
「お疲れ様ね、ギルちゃん。今日は羊肉をローストしたステーキに、サラダ、それとオニオンスープね。ビールはこっち」
「わぁ、美味そうな肉だ。いただきます、ソニアさん」
夕食を配膳してくれたのはソニアという名前の、戦乙女クランで料理番などを務めている人物だった。彼女は、食料の管理をしてクランの活動を支えてくれている女性である。
まだ30代ぐらいの若い女性だが、戦乙女クランのメンバーが食べる毎日の食事を用意してくれている裏方として非常に活躍してくれている人だった。戦乙女クランは彼女無しでは成り立たないと言われるほど。
メンバーの皆からソニアは、お母さん的な存在として親しまれていた。
夕食の準備をお願いして、食堂に用意されている自分の席についた。僕の目の前には、上流階級がとるような豪華な食事が並べられていく。一般家庭ならば麦を粥状にしたオートミールと呼ばれている食べ物が主食で、お肉を食べるのは特別なイベントの時ぐらい。
少なくとも並の冒険者では食べられるようなものではないメニューが、この戦乙女クランでは毎日のように用意されていているので、クランメンバー皆が美味しい料理を食べることが出来ていた。
というのも冒険者として活躍するためにはしっかりとした物を食べないとダメだ、というような考えを持っているクランマスターの方針に従って、そして多くの賛同者を得て、拠点で用意される毎日の食事にクラン運用費がふんだんに分配されるぐらい重要視されていた。そして実際に用意されているのが、美味しくて豪華な食事。
食材はソニアが中心になって、こだわりと手間をかけて各地で調達してきたような厳選した物を使っているらしい。更に彼女が長年にわたり磨いてきた技術を活かして調理されたという料理。マズイわけがない。
「ほら、小さいんだから残さずに食べるように。野菜も食べなさいね」
「あ、はい。美味しく頂いてます」
面倒見もいい人で、身体が小さい僕をいつも気遣ってくれていた。毎日、沢山食べるように嫌味もなく言ってくくれる。もう僕の成長期は過ぎていて、これ以上に身長が大きくなるかどうか定かではないが、とりあえず言われた通りに食べる。背が伸びれば良いな、と思いながら。
食堂で料理を食べ終わったら後は、拠点の中にある自室に戻って休むだけ。こんな感じで、僕の戦乙女クランでの1日が終わる。
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