第二章 ヒロインと皇子①
「三日です」
びし、とミナが三本の指を立てた。
「少なくとも三日、安静にして過ごすこと。守れなければ休学にして
「いや~~~ん……」
例の広々した
「無理ないです。朝はあんなにお元気だったのに、
「本当に大丈夫ですのに……」
「三日、部屋から出ないでください。でないとあたしが閣下にお
「まさか……」
「閣下の
ちゃんと、って。
正直、まだ頭がぐらぐらする。ゲーム世界の『自分』であったはずのヒロインが『他人』として行動しているのを見たとたん、頭と身体が
(前世でプレイしたゲームでは、フローラとしてこの世界を体験していたけど)
ヒロインの名はフローラ・チェルニー。生まれは平民だが、
(お兄様のお言い付け通り、あらためて環境に
アレクセイにはずいぶん心配をかけてしまった。
(あ、やばい! 思い出しちゃう!)
エカテリーナが倒れた時、すぐに気付いて
そして、
エカテリーナが意識を取り戻した時──。
(お兄様に! お
『お兄様……?』
『エカテリーナ! 気が付いたか──』
あの時、アレクセイは泣き出しそうに切ない顔をした。
そして、エカテリーナの額に
(あああ思い出しただけで鼻血出そう!
両手で顔を
『お兄様、わたくし歩けますわ。下ろしてくださいまし』
『
お姫様抱っこはちょっと
しかし
『お前に何かあれば、私も生きていられない。お前が私の生命なんだ……』
(死んだー! お兄様、妹はあなたの言葉に
医務室のベッドに横になって、アレクセイにもう学舎に戻ってくださいと頼むと、少し
『今日は、手を
かっこいい大型犬がぺたんと耳を倒してしょげてる姿がダブるんですが。ついさっき視線ひとつで全校生徒を
(ツボった! 自分の萌えツボ発見しました!)
手でもなんでも握っててくださいお願いします、とか口走りそうになったが、そこにミナが
それで付き
そうでなかったら危なかった。アレクセイの中では、妹にはしばらく学園を休学させて公爵邸で静養させることが決定
自室は当然、女子寮であって、男子禁制。
なお、寮へは自分で歩いて戻ろうとしたが、なんとミナに抱き上げられ、メイドにお姫様抱っこされて帰る羽目になった。お
「ごめんなさいね、ミナ。お兄様、お
「そうですね、最初は。でもお言い付け通り『お嬢様は学園を離れるのが悲しいってずっと泣いてます』って言ったら、公爵閣下が
「そ、そう……」
ごめんなさい。シスコンにつけ込んでごめんなさいお兄様。
でも、平民落ちの
エカテリーナはお兄様のために、皇国滅亡フラグを折ってみせます!
そんなわけで、入学していきなり三日休んだエカテリーナは、四日目に初めてクラスへ登校することになった。
教室に入ると、クラスメイトたちがうっと息を
「エカテリーナ・ユールノヴァの席は」
アレクセイに
「では、私は自分のクラスに戻るが……少しでも不調があれば先生に申し出るんだよ。お前は決して
「はい、お兄様。お言い付けの通りにいたしますわ」
しおらしく答えると、アレクセイはそれでも心配そうに妹の
エカテリーナは
「お帰りをお待ちしております」
鞄を
……さて。
さりげなく、周囲の様子をうかがってみる。
うん。
ドン引きしてますね!
そらそーだ。こんな
特別感ひけらかしまくりだもんね。
三日
いやー……参ったなー、はっはっは。
はあ。
とりあえずこれだけは、とエカテリーナは
「あの……お隣の方。わたくし、エカテリーナ・ユールノヴァと申しますの。どうぞ、およろしくね」
すると隣の席の少女は少し
「ご
だよね。
ゲームでもエカテリーナはヒロインの隣の席だったよ。挨拶したら、いきなりガチ切れされるんだけどね。
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