第21話 決着
主に僕が魔法でドラゴンに攻撃を当ててドラゴンからの注目を引いたら、その隙にフレデリカさんがドラゴンの視界の外れた場所から不意をついて攻撃。大剣で思いもよらない攻撃をされたドラゴンは怒って僕から視線を外し、攻撃を加えたフレデリカさんに向かおうとする。
しかし、頭の向きを変えようとする瞬間を狙ってシモーネさんが遠距離でドラゴンの意識外から攻撃する。再び不意をつかれたドラゴンは顔のあたりを攻撃されたことに怯んで、動きが止まる。そして、ドラゴンの意識から消えていた僕は魔法を放つ準備が完了して、あさっての方向に向いて動きが止まっているドラゴンにめがけて思いっきり魔法を放つ。
魔法の脅威に晒されたドラゴンは、再び僕に標的を定めて向かって来る。
途中、接近戦を挑んでいるフレデリカさんはドラゴンの尻尾を振り回す攻撃を何度か当てられれるが、しっかりと大剣で防御してダメージを受けないようにする。僕は魔法防御壁を使って、攻撃を受けないようにする。シモーネさんは、遠距離からドラゴンの攻撃が届かないようにしたり、炎を吐こうと開けた口の中に向かって矢を打ち込んで、ドラゴンに攻撃をさせないようにする。
このようなパターンで何度か繰り返し、ドラゴンの機先を制して気勢をくじくように攻撃していく。ドラゴンは普通のモンスターに比べて物事を判断できる知能があるので、僕達が順番にドラゴンに攻撃しているという連携パターンに気づく。
しかし、順番に攻撃していることに気づいたドラゴンは次に誰が攻撃してくるのか予想して身構えるために、ドラゴンが身構えて攻撃に備えた事を察知した僕たちは連携を状況に合わせて柔軟に変えていく。僕が連続魔法で2回目の魔法を放ったり、フレデリカさんが離れるフリをして再び接近して2度目の攻撃を加えたりと、それぞれの人たちが瞬間に判断して対処していく。
こうなると怒りで狂ったドラゴンは炎を狙いも付けず周囲に吐き出し、巨体を思い切り動かして暴れ回しながら周りを破壊しようと猛り狂う。そうなったら、僕達3人は一気にフロアから離脱してドラゴンからの攻撃が届かない場所へ避難する。ドラゴンが暴れ疲れて体力が尽き、動かなくなったところを再び近づいて攻撃していく。
そんな風な戦闘を2時間も続けて僕たちは結構な体力を消耗して疲れていたが、それ以上にドラゴンは満身創痍な状態となって戦闘を続けていた。驚異的なドラゴンの生命力である。
ドラゴンの身体には僕の魔法攻撃によって抉られた傷や、フレデリカさんの大剣によって付けられた傷でいっぱいになっていた。しかし、ドラゴンは動き続けているし僕たちも油断しないように攻撃を続けている。
ダンジョン内ではモンスターは生命力が0になると、光の粒子になって消えていく。もちろん、今戦っているドラゴンもダンジョン内のモンスターとして例外ではないので、傷だらけに見えても、光の粒子に変わるまで戦闘が続けて出来るということだ。
慢心していては、ドラゴンからの思わぬ攻撃を受けてしまうので緊張感を切らさないように注意しながら攻撃を続ける。
戦闘を始めてから3時間が経過したぐらいの頃。僕がドラゴンの首の横部分に魔法を当てた瞬間、ドラゴンは大きく口を開けて断末魔を上げながら大きな音を立てて横たわった。
そして次の瞬間にはドラゴンの身体全体がパッと白く光り始めた。通常のモンスターに比べて何倍も大きいドラゴンが光の粒子になっていく姿は圧巻で、僕は戦闘の疲れを感じながら粒子が消えていくのを見つめて、ドラゴンとの戦闘が終わったのを実感した。
「ふぅ、お疲れ様!」
「フレデリカさんもお疲れ様です」
フレデリカさんが近づいてきて、労いの言葉をかけてくれる。彼女が手に持つ大剣は、ドラゴンの胴体に何十回も叩きつけたり、尻尾の攻撃を受けたので多少刃が欠けている事が見て分かった。
「お疲れ様。思ったよりも簡単に倒せたわ。もちろん、エリオット君の魔法による攻撃が効いたから倒せたのでしょうけれど」
「お疲れ様です、シモーネさん。シモーネさんもフレデリカさんも活躍してくれて、僕も楽に魔法を当てていけましたよ」
シモーネさんの冷静な態度と感想。彼女には遠距離攻撃で集中して援護してもらったり、状況の判断や一瞬の隙を突く鋭い攻撃を合間合間に狙ってもらっていたので、体力よりも集中力や精神力を相当使ったと思うのだけれど、それを感じさせない余裕な雰囲気。
今回のドラゴン戦、僕の今までのドラゴンというモンスターとの戦闘した経験の中で一番楽に倒すことが出来たとものだと思う。
今回戦ったドラゴン、ドラゴンと言っても身体が非常に大きいという特徴だけで、頭はそんなに賢くなくて、攻撃方法も炎を吐くか、巨体で押しつぶそうと突進してくるか、しっぽを振り回すかぐらいしか無かった。だけど、それらのことを考慮しても楽に倒すことが出来た。
今まで僕1人でドラゴンを倒してきた時は、魔法を撃って回避しての繰り返しだったが、回避するときに一発でも当たったら致命傷だという緊張感や、ドラゴンという巨体と対峙する事で非常に精神を消耗していた。そんな戦闘を何時間も続けるので、攻撃を全て回避したとしても非常に疲れる。
しかし、今回はフレデリカさんとシモーネさんの2人がドラゴンの注意を引いてくれている間に、戦闘中にも何度か落ち着ける時間が僅かに出来た。少しの落ち着ける時間が、集中力と魔法の精度を高めて効率よく魔法を放っていく助けになった。
ドラゴンの光の粒子が消えた後、ドロップしたアイテムを確保する。そして、入ってきた時とは逆方向の通路に進んで、フロアを脱出。僕たちは無事にドラゴンが居たフロアを超えて反対側の通路に進むことが出来た。辿り着いた通路の脇で少しの間だけ休憩。3人ともドラゴンから受けたダメージは少なく特に大きな怪我もなかったので、上層階へ進むのには問題がなかった。
体力をある程度回復させた僕たちは、休憩を終えて上層へ進む階段を登り始めた。
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