創作のこと③《推敲の獣》

このエッセイを書きはじめてから、自分的には当たり前だった「創作さん」がちょっとヘンだな……と、気付きました。

でも、実は、まだまだあるのです。


物語をひとまず書きあげて、内容の見直しや推敲に入る頃に現れるのが、白い毛並みの獣です。

もちろん幻で、現実には存在しません。

でも、見えてるの。ヤバいよね、円堂さん……。

しかも、その獣が来てくれないとわたし的には困るのです。


物語が仕上がってくると、だんだん「グルグル……」っていう唸り声が遠くのほうから聞こえるんです。

わたしはもう慣れっこなので「あっ!きた!」ってなるんだけど。

そして、知らんぷりしつつも近づいてくるのを待ちます。

すると、だんだん、少しずつ、その生き物はわたしのところに近づいてくるんです。

「だるまさんがころんだ」をするみたいに、唸り声との距離が、気づくたびに狭まっていきます。


真っ白な毛をした美しい獣で、姿の全貌を見たことはまだないのですが、狼っぽいです。

見たことがないというのは、見ようとすると逃げちゃうから。

だから、絶対に振り向かずに、近づいてくるのをじっと待ちます。

わたしのそばにやってきてそこでうずくまると、わたしは獣の毛を撫でます。

白い毛は美しくて光り輝く雪のように艶やかで、毛の下には肉体があるので、ほどよく柔らかくて、脈打っていて時々うねります。

それを、そっと撫で続けるんです。

すごく大きいので、『もののけ姫』のモロくらいあるかもしれないです。


どうして獣が来るんだろう――と、はじめは不思議に思っていたんだけど、何度か経験してみて、なんとなく気づきました。

その獣の毛を撫でられるようになった時っていうのが、取り組んでいた物語の完成度が、自分の中のOKラインに達した時なんですよね。

何度か幻の獣を撫でてみて、きっとそうなんだろうなぁーと思います。


つまり、なんだけど。

わたしは物語をモンスターの一種だと思ってるんですよね。

物語はふしぎな獣みたいなもので、書き手はモンスター使いだと思うのです。

ようは、その幻の獣がきてくれるのは、物語がちゃんとモンスターになれた(と、わたしが納得した)時なので、来てくれないと困るんです。


でも、「おいで!」と無理に呼んでしまうと、かえって遠ざかってしまうので、知らんぷりをして待つんです。

見ないふりをして推敲を続けて、いつのまにかそばにきたら、体温と毛並みの柔らかさを感じて、物語にちゃんと同じように、血が流れて、肌触りがあるかな~とか、突然どこかに飛び出していける獣になっているかなって、そういう面からもう一度確認します。


もう一つ、いつも気をつけているのが、冒頭にモンスターを配置すること。

冒頭に置くのは、絶対にミミックです。

読んでくれる人が覗きこんでくれるような魅力的な宝箱で、でも、蓋をあけた瞬間にその人を引きずり込まなくちゃいけないんですよ。

だから、最後の最後まで「そこで宝箱のふりをしているきみ、きみはちゃんとミミックかい!?」と、確認します。

ミミックはお調子者で、最後の最後まで目が合いません。必死になって何度叫んで尋ねても「さあね~」っていう態度なので、ずっとヒヤヒヤしています。

もっとうまくコントロールできるようになったら、いつか目が合うのかな。


あくまで自己満足、自分のレベルだけど、物語は、書いた人の自由にならないくらいの化け物だといいな~と思ってます。


そういう物語が作れるといいな。

理想にはまだまだ遠いので、次はもっと面白い物語をつくりたいです。



さてさて。次に書く新作を準備中です。

だんだんかたまってきたけど、これまで書いたお話よりも絶対に面白いので、早く書きたいな~と、ソワソワ。

あと4冊くらい本を読んだら、とうとうプロット作りに入れるかなぁ。


とにかくわたしがそのお話を読みたいので、早く書きた過ぎてたまらないです。

書きたいな~。

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