07

「ここ座って。」


空いている場所に案内され控えめに座ると、設計課のメンバーが一斉にこちらを向く。

うっ。

そういうの苦手なんだよね。


「こちら、図面管理課の仁科さんと早川さんです。」


宗田くんの紹介に、私はペコリと頭を下げ、可憐ちゃんは「お邪魔します」と愛想よく挨拶をする。

ぐるりと見回せばよく図面を借りに来るメンバーもいて、全く知らない雰囲気ではなさそうだ。


物珍しげにこちらを見てくる視線が痛い。

けれどそれはすぐに打ち消された。


「図面管理課のアイドルっていう早川さん連れてくるなんて、宗田やるじゃん!」


アイドルと呼ばれた可憐ちゃんは手をブンブン振る。


「あ、アイドルなんかじゃないですっ。」


そんな仕草さえ、女の子らしくて可愛いんだよね。

可憐ちゃんは間違いなく図面管理課のアイドルだよ。


可憐ちゃんに注目が集まり、私に向けられた視線も全て可憐ちゃんが引き受けてくれる。


私はこっそり、ほっと胸を撫で下ろした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る