革命の為の前進。
(なっ....何が起こっているんだ!??)
僕は榊原さんの身に起きた突然の事故に驚愕し、思わず足を止めた。
この流れは明らかに不自然過ぎる。
それはまるで、榊原さんと加害者だけを対象に時間が動いているような......そんな奇妙な光景ーー。
そして、その事故の後、加害者は車を停車可能な位置に車を停車する。
(成る程...。
事故の形はどうあれ、最終的な流れは変わらないって事か...。)
その後、運転手は車を降りると今までと同様、面倒くさそうに榊原さんの方へと歩き出す。
そして、痛みで踞る榊原さんに告げる。
「おい、てめぇ...ボサッとしてんじゃねぇよ...。
あん?
ちっ......轢いちまったのかよ面倒くせぇな....。」
加害者の男は舌打ちしつつ、榊原さんの胸ポケットに、連絡先の書いた名刺を無造作に入れた。
そして、加害者の男は「ここに連絡しろよ、じゃあな!」と榊原さんに言葉を叩きつけ、足早に立ち去る。
(ふー......何度見てもムカつくな、あの加害者の男の態度?)
幾度も見てきた加害者の男の対応にイラつきつつも、僕はこの状況を把握するべく考えを整理した。
しかし、状況から色々な可能性を考えてみたものの何かイマイチ、内容が纏まらず仮説すら成り立たない。
(うーん....駄目だな....?
今回のは、法則性や動きが何か読めない。
婆ちゃんに相談してみるか?)
僕は自分で考えるのを止め、祖母にアドバイスを求めるべく、祖母が生存している時間軸へと向かう。
祖母が生存している時間軸へのタイムトラベルは、今回が三度目である。
しかし、僕が祖母の目前に顔を出した直後
祖母には特に驚いた様子もなく、落ち着いた表情で僕に笑いかけた。
「あら?
さっき姿を消したと思ったら、また戻ってきたのね透ちゃん。
早々に困り事でもあったのかしら?」
祖母はそう言うなり苦笑する。
「ごめんね、婆ちゃん。
実は...その通りなんだ。」
「取り敢えず、状況を教えてちょうだい?」
「うん、実はーー。」
以前の記憶を保持している祖母に、分かる範囲で状況を説明した。
しかし、それでも祖母は状況を理解したらしく、ゆっくりとした口調で僕に向けて言う。
「うーん、確かにそれは一筋縄ではいかないかも知れないわね?
そういえば、遠山さんの息子さんの時も、似たような状況があったわね。」
「えっ....似たような状況?」
「えぇ、多分、本質的には同じような状況だったと思うけど。」
「それって、どんな状況なの?」
「そうねぇ.....。
あえて言うなら、起こるべき事象が規定時間軸に生じなかった結果、発生エネルギーが蓄積し一気に吹き出したって感じかしらね?
つまり、修正力や強制力を増幅しているのは、その反動なんでしょうね。」
「うーん......つまり、大雨が続いた結果、堤防が決壊して大水害に発展する的な感じかな?」
「そうねぇ、その例えで間違ってはいないでしょうねぇ。」
祖母は、少し困ったような表情を浮かべながら僕の問いに答える。
発生する現象が、一般的な形で引き起こされるモノでないとすると、ここからの対処はかなりキツイものになるだろう。
恐らく祖母は、その大変さを身に沁みて理解しているからこそ、何とも言えない表情を浮かべたのだ。
しかし、そうは分かっていても成すべき事は変わらない。
進むしか道はないのだ。
「ねぇ、婆ちゃん......。
無茶を承知で聞くけど、何か良い策とか無いかな?」
「うーん、策ねぇ.....。」
僕がそう尋ねると祖母は、口を閉じ暫し沈黙した。
(まぁ、対策なんて簡単に出てくる筈もないよな?)
祖母の反応は当然といえば当然だった。
予想外だらけの事象に対して、予測など立てられる筈もない。
如何に発明に関して天才的な頭脳を保有する祖母といえど、その対策を見出だすのは決して容易いものではないだろう。
しかし、数分後、祖母は不意に口を開く。
「そうね.....対策になるかどうかは分からないけど、恐らく起こり得る事象の物理法則の範囲みたいだし、先ずはパターンを検証してみたらどうかしら?
そうすれば、有効な発明品や対策を見つけやすいと思うわ。」
「そうか成る程......冷静に考えてみれば、確かにそうかも知れない。
良く考えてみたら周囲の状況がどうあれ、事象は物理的な法則を無視してはいないよね?」
「えぇ、そうねぇ。
ただ、永続性ある妨害行為には、瞬時に修正力や強制力が働くと思うから、それには気をつけてね。」
「うん、分かったよ婆ちゃん。
取り敢えず、パターンを検証行ってくるよ。」
「頑張ってね透ちゃん。」
「うん、有り難う!」
僕は祖母に礼を言うと、現在の時間軸へと帰還した。
きっと、事象パターンが分かれば攻略法も見えてくる筈......。
僕はそんな一筋の希望を胸に再三、榊原さんが事故に遭う時間軸へと向かった。
榊原さんの運命を変える手掛かりを掴む為にーー。
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