変えられぬ過去と最初の一歩――。

(疲れたぁ~。

婆ちゃんは、こんな事を何度も繰り返していたのか....。)


僕は改めて、祖母の偉大さを感じていた。


祖母の年齢は七十近い。


だが、祖母は目的の為にこんなにも体に負担がかかる作業を繰り返していた。


滞在時間を四時間程残した状態で、帰還しても千メートル程度のグランドを全力で何周も走ったような疲労感が反動として体に残る。


十代の僕ですらキツイと感じる行為。


ならば祖母は余程の無理を重ねていたのだろ。


ただ、僕は病弱だから一般の十代より体力が無い事も一つの要因かも知れないが......。


(つ....疲れたなぁ~。

流石にもう休むしかないか....?)


僕は元の時間軸に戻るなり、早々にシャワーを浴び、ベッドに潜り込んだ。


眠りにつくまでに恐らく、五分とかからなかっただろう。


過去への旅はかなりの疲労感を伴うものだったが、僕の心は不思議と晴れやかだった。


まるで目の前の靄が消えるような、そんな感覚....。


だが、だからといって僕は納得はしていなかった。


過去に戻った所で間違いなく祖父を助ける事は出来ないし、祖母を説得する事も出来ないかもしれない。


それにあり得ない話だろうが祖母の説得に成功したら、タイムゲートは存在しなくなる。


結局、過去に戻った所で祖母や祖父の運命は変えられなのだ。


仕方がない事ないーー。


僕は一旦、二人を助ける前提を考えの中から除外する。


ならば、誰の運命ならば変えられるだろうか?


朧気な意識の中で僕はふと、そんな事を考えた。


そして、気が付いた時、時間は既に午前八時ーー。


高校に登校する場合は遅刻コースまっしぐらなのだが今は丁度、夏休みに入っており幸いにも時間に追われるような事はない。


僕は着替えて居間に行くと、咲子叔母さんが作ってくれたテーブルの上の朝食を確認する。


(軽めの朝食か...。

ありがたい。)


朝食を手に取りオカズをレンジで温めた後、それを食べながら、次にどうするべきかを考えた。


朝食は比較的シンプルでハムエッグに味噌汁、魚と山菜の煮物といった組み合わせ。


素朴な組み合わせだったが、咲子叔母さんの愛情や思い遣りを感じ、僕は思わず涙した。


咲子叔母さんは、他人である僕を本気で心配し愛情を注いでくれている。


心底、そう感じたからだ。


それはあの過去で、祖父と祖母が僕達への想いを聞いた後だからこそ、改めて理解出来る。


咲子叔母さんは僕を本気で、家族だと思い接してくれているだ。


僕はその直後、皆の愛情や優しさに守られて生きいたのだと自覚する。


そして、その思いが次なる行動への引き金になった。


(そうだ......家族を取り戻そう。

父さんや母さんを....そして優の過去を変えるんだ!)


僕は新たなる決意を胸に秘め、運命を変えるべく、最初の一歩を踏み出そうと決意した。

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