指輪

指輪


 どこかの本か何かで指輪をつける指の意味を見たことがある。うろ覚えだけど、右から入って左から出る、とかなんとか。まぁ実際はどうだかって感じだけれどもう何も入ってきてほしくなくて、何も出て行って欲しくないから右手の親指と左手の薬指に指輪をつけてみることにした。

 プラシーボ的な何かに非常に弱い僕は、もう何も聞こえなくなったし、何も発さなくなった気分だ。

 新しい何かは何もいらなくて、本棚に雑にしまってある写真をなんども見返すように、繰り返し繰り返し過去を反芻する。

 思い出をなぞるようにあの日と同じ気分になれるのである。何度もページをめくった頃に親指と小指に違和感を感じて二つの指輪を机の上に置いて寝る。そんな夜が今日で数日目。以上。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る