「好き」が必ずしも「得意」ではないって話

「好きなジャンルはなんですか?」


 と問われると悩みます。


 幼い頃は親に昔話の絵本を読み聞かせてもらってました。

 本好きの原点でしょう。

 保育園で自分で読んでいた記憶があるのはあんぱんまん。

 まだ、デフォルメ二頭身になる前のとにかく顔を食べさせるだけのあんぱんまんです。

 読書が本格的に好きになるきっかけは小学校の夏休みの課題で読書感想文を書かなきゃいけなくて、悩んだ挙げ句手に取った坂本龍馬の伝記。

 龍馬のエピソードがやたら面白くって伝記にはまって小学校のうちは図書室貸し出しでは伝記ばかり読み漁っていました。


 ところが家ではどうだったか?


 ズッコケ三人組シリーズ、ガンバの冒険シリーズ、なぜかうちにあった児童向けに翻案されたベルヌの地底探検やドイルのきょうりゅうの世界ロストワールドなどの空想科学小説……。

 あ、こうやってみると冒険ものが多いですね。

 小学校の頃のお小遣いはアイドルのレコードや漫画に振り分けられ、中学時代の新聞配達のアルバイト代はパソコンとゲームに消えていましたから小説の類はもっぱら図書館です。

 高校時代になると世はライトノベルの勃興期で、とりわけD&D普及のために雑誌でリプレイされたロードス島戦記からドラゴンランス、指輪物語と食指を伸ばし、異次元騎士カズマ、魔獣戦士ルナヴァルガー、剣狼伝説、魔群惑星に聖刻の書、妖魔夜行、三剣物語と次々読み漁ります。


 結構未完の作品がありますね。

 思い出したら続きがきになる作品がチラホラ。


 同時にバブルに浮かれていた時代でもあるので、How to本やタレントのエッセイ本なども読み散らかしてました。

 一方で現代小説ばかりではなく、古典も読んでおくべきだとなぜか思いまして、東西の名作・傑作も読みはじめます。

 教科書に載っていた作品を足がかりに夏目漱石、森鴎外、芥川龍之介、太宰治、梶井基次郎などなど日本の文学史に刻まれた小説は大概読んだはずです。

 もっとも、筋を覚えてない作品も多いのは合わなかったからでしょうか?

 夜明け前なんて最初の数ページに一時間も費やしたほどです。

 趣味嗜好に個人差があるように文章にも合う合わないがある事を知りました。

 個人的に桑田佳祐の歌は名曲が多くよく聴くのですが、歌うとなると歌いづらい曲ばかりです。


 それとは別にたまたま図書館で借りた竜馬がゆくで再度、今度は歴史小説にはまり、文庫本もあるのにわざわざハードカバー全五巻を買ってから吉川英治、山岡荘八、海音寺潮五郎、司馬遼太郎から隆慶一郎と買い集めていくのです。

 ところで、竜馬がゆくは時代小説の傑作とよくいわれますが、自分は青春小説の傑作だと思いますね。

 思春期に読んだら絶対あの生き様に憧れちゃいますよ。

 思うままに生きて歴史を動かしちゃうわ、女にモテまくるわ、厨二心をくすぐられちゃいます。

 だから司馬史観なんて信仰が生まれちゃうんでしょう。

 節目節目で龍馬には色々教わってます。


「SFは?」


 と聞かれれば、子供の頃に読んでいた空想科学小説が実は児童小説として翻案されていた事を知り、地底旅行、失われた世界ロストワールドを完訳本で読み直したのをきっかけにこれまたハマってベルヌ・ドイル、ウェルズ、アシモフと読み進めていくうちに興味がホーガンにたどり着きました。

 ただ、ホーガンは冒頭の疑似科学の説明を通り抜けて物語が動き出すまでややかかるので普段小説をあまり読まない人、SF小説を苦手にしている人にはお勧めしにくいです。

 もちろん漫画も読んでいたし、映画も観てたし、アイドル追っかけてもいました。


 時間があったんですね。


 で、色々読んでいくうちにまぁ、手に取ろうとする小説に傾向は出てきます。

 大人になると時間の制約もキツくなりますから。

 自分は、小説はできるだけ一気に読みたい派なので、三時間くらいまとまった時間が取れるようでないと読み始める気にならないのです。

 しおりなんか挟むととにかく続きが気になるんですよ。

 続きが気になって一日中続きにばかり頭がもっていかれちゃう。

 なので手に取る本がハードSFよりライトファンタジー、結末の判っている安心安全の歴史小説に偏りがちになってしまう。

 小説を諦めてエッセイでいいかとか失礼な事を考えたりする。

 ファンタジー、好きですよ。

 エッセイ、面白いですよね。

 でも、ゴリゴリのハードSFでその世界にどっぷり浸りたいとかも思うんですよねぇ。


 さて、色々読んできた自分ですが、小説を本格的に書きはじめたのは高校時代。

 お気づきですね、ライトノベルを読み漁っていた頃です。

 オタク文化の勃興期でコミケを模した同人誌即売会などが全国各地で開催されはじめた頃でもあります。

 当然書いていたのは大長編のファンタジー物。

 今とあんまり変わりませんね。


 …………。


 いや、あの頃と違って未完のままほったらかしにはしませんよ。


 ホントだよ。


 ところが、仲間内で見せ合っていて評判が良かったのは短編の恋愛ものだったり子供向けの小編など。

 まあ、未完の作品より完結作の方が評価が高いのも確かですが、気合入れて書いてる作品より頼まれ物で片手間の(この行為自体かなり失礼だったりする)方が評価されるとかやっぱりダメージでかいですよね。

 で、思い出すわけですよ。

 古典・名作文学を読んでいて感じた「合う」「合わない」があった事を。

 それは筋書きに対してだったり、文体に対してだったり様々だったのだけれども。

 インプットに合う合わないがあるのと同様、アウトプットにも自分に合う合わないがあるんだろうと思い至るまでにどれだけ時間をかけたことか。

 ただ、そうは言っても創作意欲ってのはかなり根源的なところから湧き出すものなので、趣味のweb投稿ではやっぱり自分の描きたいものを優先しちゃいますよねぇ……


 ──っていう、本日のエッセイでした。

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