安芸倫也の邂逅

あの春の日以来

ヒロインとは程遠かった恵は

日に日にその魅力を増していき、

高校3年生の夏の時点で俺が望むメインヒロイン

そのものと言っても過言ではないほどだった。

順風満帆とも言えた2人の関係を崩してしまったのは

他の誰でもない俺だ。

俺は巡離ルート、いや恵ルートの大きな分岐点で

最低の選択をしてしまったのだ

ふと、恵に初めてギャルゲーをプレイした時の事が頭を過った。

「本当に分かってなかったのは俺の方じゃねぇか」

俺は、恵が俺の望むメインヒロインに近づいていた事を当たり前だと思っていたのでは無いだろうか

そして加藤恵を叶巡璃だと錯覚していたのではないか

「ごめん、ごめんな、恵、俺最低の主人公だったよ。何で俺が泣いてるんだよ全て俺のせいだって言うのに」

そう呟くと頬に煩わしく纏わり付いていた雫を

そっと振り払い、

彼女の事を思いながら病室の窓から外を眺めた


「もうすぐ、春だな。」


窓から見える桜並木は満開とは言えないが

あの日のような

いや、彼女のような

美しい花を付けていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る