第18話

 騎士団本部近くのレストラン『小さな世界』

 (今度、選挙があるみたいだよ。でも投票権は男にしかないんだって)

 リモは目の前の皿に盛られたターキッシュ・デライトをつまみながら言った。

 「選挙って何だ?」

 ルガーは揚げパンを頬ばっている。

 (大臣とか国王をみんなで選ぶしくみだよ。それ何?パン?もしかして油で揚げてあるの?)

 「ああ、結構イケる。しかし選挙で国王に選ばれた奴はラッキーだな。一生安泰だ」

 (六年で交代だよ。それに王都の復興、経済の立て直し。エルフガルドとの緊張緩和。仕事は山のようにある。しかも評判が悪ければ辞めさせられちゃうんだよ)

 「そりゃいい!まるで王都全体のご機嫌取りだ。で誰が選ぶんだ?」

 リモはため息をつく。

 (だから、王都の男が選ぶの! それが投票権だよ。まったく許せない。男にしか選挙権がないだなんて)

 リモはターキッシュ・デライトを口に放り込む。

 亜麻色の髪は後ろに縛られ、額に軟膏を塗った布を貼っている。大きな両目でルガーを睨む。

 「なんで怒るんだ?お前は男でも女でもないだろ。にしても知らずにオレはエルフとコンビを組んでたわけだ」

 (エルフと不死身のウェアウルフ(狼男)のコンビだ。悪くないんじゃない。うん)

 「!!」

 思わずルガーはリモに向き直る。拍子でターキッシュ・デライトの皿を鋼鉄の拳でひっかけ床にこぼす。

 ルガーは思わず「しまった」と言ったが遅かった。

 リモはルガーの髪の毛を掴んでテーブルに思いっきり打ちつけた。店内が一瞬何事かと静まり返る。

 「頼むからそういうのはやめろ。いくらオレが頑丈でも、周りが引く」

 (僕は気にしないよ)

 リモは声をあげて笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鋼鉄のルガーと亜麻色のリモナーダ~空中庭園崩落事件~ @nightfly

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ