第13話
頭蓋骨だらけだった。
部屋の中は図書室のように木の棚が林立しており、棚にはびっしりと頭蓋骨が並べられていた。
ピスタは片手で手近な頭蓋骨を掴んだ。人間の頭と似たような大きさだった。ボールのように空中に放り投げてからキャッチした。
「人じゃないな。オークのドクロだ。几帳面に並べたもんだ」
(これを見てください)
リモは棚の奥に進む。ピスタは手に先ほどのオークの頭蓋骨を持ったまま後に続く。
リモの案内した先には全高一メートルはあろうかという巨大な頭蓋骨が床に置かれていた。
「こんなオークは見た事が無いな」
(はい。野生でここまでの大きさのオークはあり得ません)
「そいつの番号は?」
(流石です。気付かれましたか)
「バカにしてんのか?」
ピスタは持っていた頭蓋骨の後頭部をリモに向ける。そこには黒い文字で小さく『2』と書かれていた。
リモは巨大なオークの頭蓋骨の後頭部を覗きこんでから言った。
(149です)
「番号の大きい順に頭蓋骨が新しい。つまり徐々に頭蓋骨が大きくなってるってことだ」
(トクビルはオークの巨大化を研究しています)
「鉱山での金の産出量増大が目的か……それとも……。どっちにしろ気色の悪い野郎だ。穴ぐらでオークを交配させてほくそえんでやがるんだ」
(隠し部屋に来る前に鉱山の内部を見てきました。全面的にオークが使われています。採掘、鉱石の運搬、粉砕、精製の全ての工程でオークが昼夜を問わず作業しています。人間は一人もいません)
「最初はスラグの運搬だけやらせるって話だったのにな。全行程で二十四時間酷使か。オークとはいえ全くひでぇ扱いだ」
(はい。王都のスラムに仕事にあぶれた鉱山労働者が多いのも頷けます)
「人間にとってもひでぇ話って訳だ。つくづく情けない。鉱山運営も奴が仕切っていてオレはこの年まで何も分かっちゃいなかった」
ピスタは手近な棚に持っていた頭蓋骨を押し込むと踵を返した。
「戻るぞ。目的は果たした。戴冠式の後、奴を法廷の場に引っ張りだしてやる。エルフガルドに貢ぐのも鉱山でオークを使うのも止めだ! オレはマレクを立て直す!」
(はい!)
「オレの国だからな」ピスタはリモに聞こえないようつぶやいた。
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