第21話 先生の言葉
療育教室の名前はたんぽぽ教室。
たんぽぽ教室には、市内から通ってる親子がほとんどで、市外からは私たち親子ともう一組。
偶然にも家が比較的近い人だった。
私たち親も、子どもと一緒に遊びながら関わり方を先生から学んでいく
声のかけ方ひとつ見ても、自分のやり方とは全然違う
声のかけどころ、褒めどころ、注意のしどころ。。
いろんなタイミングもちがっていた。
新鮮だった。
例えば…息子と積み木で遊んでいる時…
先生も来られて3人で積み木で遊んでいた。
何やら色んな形の物を積み木で作り上げては壊し…また作っては壊し…
先生は、その壊される一瞬前の出来た時にめちゃくちゃ大きな声で「わー!!やったー!すごーー〜い!!」とパチパチ拍手をしてくれる。
もちろん、そう言ってる間に無惨に壊れていく積み木…
「あーーーー!無くなっちゃったーー!」と言葉をかける。
聞こえているだろうけど、全く先生の言葉に反応することなく我が道を歩みつつ遊ぶ息子。
せっかく先生が声掛けてくれてるのになぁーと申し訳なく感じる笑ってごまかしてる私。
すると、息子は次に 3角の積み木の上に平べったい板の形をした積み木を乗せて、シーソーのように遊び始める。
「ギッコンバッタン、ギッコンバッタン」
そう言いながらずーっとシーソーに見立てて遊んでいた。
先生がそれを見て「えっ!!」と驚いたように声を出す。
私も「えっ???」と意味がわからず答える。。
「お母さん、これシーソーで遊んでるよね?」
「あー、、はい、そうですね。シーソーやってますね〜笑」
「えー、お母さん、息子くんとシーソーで遊んだりしてるの?」
「うーん、そういえば近くの公園に連れていったらシーソーがあるので…2人でやったりしてますけど。。その時、ギッコンバッタンって私が言ってるから。。ま、でも一瞬でどこか他のところへ行っちゃいますけどねー笑 寂しいもんですよ〜」
と話した。
すると、先生が「すごーーーーい!!!」
「えっ、えっ?何が?どこが?えっ?」
「だって、お母さんと一緒に遊んだ場面をちゃんと覚えてて、それを積み木で作って思い出しながら見立てて…記憶と繋げて遊べてるんだよ!すごいことなんだよ!」
「あっ、、そうなの?全然楽しそうには見えなくて…乗ってもすぐ降りてどこかへ行っちゃってて…いつも私1人がシーソーに残されてる感じで。。」
先生は、「ちゃんと楽しんでるよ!楽しかったから今こうやって再現して記憶の引き出しが開いて思い出して楽しんでるよ!」
そう。そうなの。。楽しんでくれてたの?
ずーっとつまらないからすぐどこかへ行ってしまうんだと思ってた。
私と遊ぶのはつまらないのかと。
楽しくないのかな……と。
一緒にあそんでても私はいつも寂しかったよ。。
でも違ったの?ちゃんとお母さんと遊んでたこと、公園で一緒に乗ったシーソー、滑り台とかも全部。全部楽しんでくれてたの?
覚えくれてるの?
言葉に言わないだけ。
表現の仕方がすこし周りの子たちとちがうだけ。
表情が少し読み取りにくいだけ。
お母さんとして、私がしてることってあまり意味ないのかな……
自信がいつもなかった。分からなかった。
正解なのか間違ってるのか。
一緒に遊ぼうとすればするほど、この子にとってそれはただの束縛で不快なものなんだろうか…と。
その答えが分かった気がした。
頑張ってたことで無駄なんて……なにもなかったんだ。
私が息子のことをちゃんと理解してなかったから、楽しんでくれてることにきづいてあげれてなかっただけなんだ。
息子のことをもっとちゃんと分かりたい。
そう思った。
それが分かったら、きっと自閉症の息子の育児はきっともっと 何倍も楽しくなりそうだもの!
先生、気づかせてくれてありがとう。
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