第14話 武器ゲット
ショールームに殺到する魔物を背に脱出し、もう一つの目的である近接武器の補充に向かう。
裏道を通ってショートカット、商店街を注意深く見回すけど、動くモノはいないみたいだ。
それでもいつ魔物が現れるかわからない。俺は素早く目的の店に入った。
「……遅かったか」
店舗は荒らされていて、包丁やのこぎりのケースが散乱していた。高級マルチツールナイフが入っていたショーケースも粉々に砕かれて、中身が持ち去られている。
この店、『坂本金物店』は包丁やお玉に混じって様々な『生活刃物』がおいてある。
理由は単純で、ここの店主が猟師だからだ。
同じ猟友会で活動するのでお互いに顔見知りである。
「坂本さんミノタウロスとかになってないだろうな……」
坂本さんはけっこう大柄だからな。
基本善人だから闇墜ちはしていないと思うんだけど、万が一魔物になっていたら止める自信がない。
「『ショーケースの品を購入される方は店主まで。狩猟免許をお忘れなく』……? でも中身がカラですね?」
シキが見ているのはハンターが扱う刃物を入れたショーケースのことだろう。
でも壊されているわけじゃなくて、カラ?
「確かにカラだ……、ああ、なるほど」
謎が解けた俺は猟友会のたまり場だった店のバックヤードに向かう。
カギの開いたガン・ロッカーを開けると、それなりの数の刃物があった。
あの書き置きは猟友会のメンバーに当てたものだったんだ。
開けたロッカーの扉にはたくさんのメモがペタペタと貼られている。
『猟友会のみなさんへ。殺傷能力が高い生活刃物はここに移しました。普段から命について深く考えている皆さんならうまく使えると信じています。私は商店街の皆さんを助けに向かいます。申し訳ありませんが、一人数本を目安にお使いください 坂本みのり』
『さかもっちゃん助かった! やっぱ包丁じゃネズミも殺せねぇな by山内』
山内さんバイって……電子じゃ無い時代の掲示板なの? 駅の伝言板のxyzなの?
『ヒャッハー!! 限定品の黒鎬長剣鉈はもらっていくぜ! by岡田』
岡田君、君はやってくれる子だと信じてたよこの野郎。
『岡田はガーデニングナイフでも使ってろ! 俺はグルカククリをもらうぜ! by武内』
クマみたいな武内さんがグルカとか洒落にならん。
『くそ出遅れた。もうトマホークくらいしかないじゃん……by板垣』
どんまい板垣。生きて会えたら笑ってやる。
『ありがとうなさかもっちゃん。マチェットナイフもらっていく。一旦田んぼの用水路みてくるわby遠藤』
こんな非常時に何フラグ立ててんだ遠藤さん!
「……これもしかして」
手に持っていたマチェットを恐る恐るシキに入れる。
フリージングストーン社製マチェット
:三谷が秋葉原で入手したマチェット。
買ったはいいが切れないので放置されていた。
ちなみに鑑定は口頭でも伝えられます。
確かに今やった事って目の前で文通するようなものだよな。ごめんシキ。
でも鑑定結果に混ぜる内容じゃないよねそれ?
改めてマチェットを取り出す。たしかにウブのままで刃がついてないな。
刃物の多くは刃付けを意図的に甘くしてあり、そのままだとペーパーナイフ以下だ。
刃をどれだけ鋭くするかは買う人の好みによるし当然といえば当然だ。
残念だったな三谷。誰か知らんけど。
まあ、遠藤さんは多分大丈夫、大丈夫だと信じたい。
田んぼって絶対魔獣化したカエルとかいるよな。なんで行ったんだマジで。
「さて、じゃあ残り物は全部もらうか。ストレージに入れておけば後々役に立つだろう」
ウルーナイフ
:アラスカのイヌイットが使っていたナイフにインスパイアされたナイフ。
斧の中身をくりぬいて、背側を持ち手にしたもの。
類似品にメリケンサック、中国武術の鴛鴦鉞、宮本武蔵の懐剣などがある。
タクティカルアクス
:拡張性の高い長柄を有する小型の斧。
残り物の雑多なナイフもこれに組み込めます。
よかったですね。
シキさん、だから鑑定結果に会話をまぜないで?
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