第12話 鑑定、仕事をする
それは銀のペンダントトップだった。
雑に仕上げた模造品の、ダガーを組み合わせた攻撃的なデザインの十字架だった。
軽い気持ちでストレージに入れてデータを読み込む。
目で見るだけで何かわかるような便利な「鑑定」はできなくても、ストレージに入れさえすれば情報が引き出せる。
大事なペンダント(小山田竜也)
:彼が高校時代に先輩からもらったペンダント。卒業後順調に落ちぶれていった彼はペンダント以上に価値のあるものを得られなかった。彼の渇望はゴブリンになっても満たされる事は無かった。
希少度:ランク外
呆然とブックに浮かんだ文字をしばらく見ていた。
ゴブリンは、小山田という人間だった。
俺は、小山田という奴を殺してしまった。
よせばいいのに、彼の一生を想像してしまった。
「……なあシキ、なんでこんな事になったんだろうなぁ」
しばらく時間がたった後、ついシキにぼやいてしまった。
「……こんな事、とは?」
シキは困惑しているようだった。
そりゃそうだ。理由なんて決まっている。地球の文明が神界のタブーに触れたからだ。
だから地球はナザレアという別世界に吸収された。
「いや、質問を間違えた。吸収された側の人間は世界が融合する時、全員ゴブリンに変わるのか?」
「全員ではありません。吸収された側の人間種、旧世人間種と言いますが、吸収した世界の人間種、現世人間種に『変換』されます。大体社会的立場などで似通った存在に変わります」
融合前からヒャッハーしてた人間はゴブリンとかになるってことか。
だとすれば魔物も人間種なのか。
「ゴブリン以外にはどんな人間種になったんだ?」
「意思疎通ができるなら人間種は主に獣人ですね。鬼人やゴーレム、戦闘にはむきませんがシルキーなどもいます。魔物ならゴブリンのほかにオーク、トロールなどいますが意思疎通は……」
「さっきの通り、だな」
ん? エルフがはいっていないな。
「ナザレアにエルフはいるんだよな?」
「はい。そもそもナザレアの支配層はエルフです。ですが新世人間種が変換された例は私の情報にはありません」
「でも俺はエルフに変換されている。使徒候補だからか?」
なんか千人以上いるらしいから、こういうパターンもあるのだろうか?
「リブロス様の個別の事情は不明です。ガイドブックである私にインストールされている知識は融合前のナザレアの常識。それと使徒が知るべき情報だけなんです」
シキがどことなくしずんだ様子で話す。
「いや、知らなくてもシキのせいじゃないから気にしないでくれ。 とにかく、日本人がみなゴブリンにされた訳じゃ無いのは良かった」
自分の事情はそのうちわかるだろう。とにかく今は生き残るために情報を集めよう。
自分探しはそれからでも遅くない。
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