第6話 意外と初めてじゃない
「いくか。いい加減独り言も飽きたし」
これ以上ここにいてはスキルに”独り言”とか表示されてしまう。
ブックにマップを表示させ、地元の市街にむかって歩くことにした。灰色の区域がつづくけど、とりあえずは直線コースだ。
草原を抜け、二十メートル、ナザレアでは二十ディジィほど坂を登るとおそらく果樹園だろう、栗林にぶつかった。
「よかった、やっぱり日本なんだな」
ガイドさんの話やマップをみて、日本の地元だとは思っていたけれど、実際に目で見て安心してしまう。
ほっとしながら林を突っ切ろうと足を踏み出す。
バリバリバリバリ!
「な、なんだ!?」
突然のエンジン音に驚いて振り向くと木々の間を柴犬ほどの大きさの塊が飛び回っていた。
――ゴッ!
次の瞬間には目印のような杉の木にぶつかり、落ちた。
農業用ドローン? と一瞬思ったけど、飛ばす理由がない。ここはやはり魔獣なんだろう。
しばらく息を潜めているけれど、それきりなんの音もしなくなった。ぶつかっていたし、死んだのか?
「スルーするか? いや、これはチャンスかもしれない」
魔獣なら倒せば素材や凝血石が手に入るし、なにより経験になる。
注意して向かうと、そこに落ちて動かなくなっていたのは巨大なセミだった。
「……確かにこの季節良く落ちているよね」
落ちていたのは最近この近辺でもみられるようになった、黒ベースにオレンジと黄緑色の縁取りがされた奴だ。やっぱりこれも魔獣だろう。
どれくらい堅いんだ?
足下の石を蝉に向けて投げつける。
――カン!
『ジッ! ジジジジジッ!』
強烈にはねをばたつかせ地面を回り始める魔獣。こんな所まで地球のセミっぽいとは。
「しかし堅いな」
まだ回復していないのか、セミは飛べずにばたついている。
手持ちに武器がないのが痛い。杖はあるけれど、アレはなんとなく精密機械のように繊細なものな気がする。
魔道カッターで接近戦をするのは怖いしな……
周りに使えそうな物はないか見回すと、抜いた雑草をひとまとめにした枯れ草の山を見つけた。
「よし、これにしょう」
ストレージからナザレアのライターを取り出して比較的乾いたところに火をつける。
ミルクの様に不透明な煙が上がる枯れ草を持ち上げてセミの方へ投げつけた。
『ジジジジジィッ!?』
セミが再び暴れ出すが、かえって枯れ草がまとわりついていく。
「枯れ草マシマシいっちょう-」
どんどん水気をふくんだ重い枯れ草をセミの上にのせてセミの動きを封じていく。
その間にも煙はもうもうと立ち続けている。
「お?」
枯れ草の小山が動かなくなったと思ったら急に山がストンと小さくなった。
「せっかくもってきたんだ、一応とどめさしておくか」
果樹園の端っこにあった60キロくらいの石を草の山の上におとすと、やはり手応えがなく地面におちてしまった。
「これは死体は消えるパターンか?」
石をどけて草をとりのけると、そこにセミはなく、黒い泥の上にビー玉ほどの白い石と30センチほどの金属のストローっぽいものがおちていた。
少しでもご興味をもっていただけましたら幸いです。
是非応援・フォローお願いいたします!
他作品もぜひどうぞ! ↓
・器用貧乏な罠師は逃亡中でも趣味に走ることをやめない
https://kakuyomu.jp/works/1177354054886393279
・どうやら相続した防具が最強っぽいんだが。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893273873
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます