第5話 世界地図

 表示されたのは奇妙な世界地図だった。

 地球の地形をとどめているのは南北アメリカとオーストラリア、イギリスくらいか。

 ガイドさんから事前情報が無ければわからなかったくらいだ。


 ピンチアウトしたから、日本がどこかはわかっている。

「日本がニュージーランドのほうまでながされてる……」


 北半球にあった日本が南半球のニュージーランドの東、あ、これモアイがあるイースター島のあたりじゃないか?


「なら、この北海道とつながっているのはムー大陸か?」


 自分で言っておいて乾いた笑いがでてくる。太平洋の中心にアメリカの二倍くらいの大きさの未知の大陸がドンと収まっていた。


「シキ、今世界地図をみているんだけどさ。世界の融合って毎回こんなに大陸がめちゃくちゃにくっつくものなのか?」


 一応シキを起こして聞いてみる。


「いいえ。通常世界はまったく別の座標で隣り合い、新大陸の発見という形で認識されます」


 だよな。こんな地図が変わっていたらナザレアだってこまるだろう。

 コロンブス新大陸発見みたいなものか。地球が取り込んだケースもあったのかな。


「今回の件はナザレアにとっても未曾有の大災害といえるでしょう。現時点でこの地理を把握出来ているのは使徒候補くらいでしょう」

 予想以上に深刻な事態だった。


 ……どうするか。

 近くにはナザレアの都城もある。言葉も多分通じる。妥当に考えればすぐにでも都市に向かうべきだ。

 でも武器はないし、そもそも魔獣がどれだけ強いかもわからない。


 どこでなにが起きるかわかるほどシキも万能じゃない。


「うーん……融合してめちゃくちゃになったけど、世界地図を見るとなんか上書きされたというか、二枚の地図が重なった感じなんだよな」


 今居る場所の風景も地元で見たことはないし、こんな大きさの切り株も周りの灌木も見たことがない。

 このあたりは赤い区画だし、ナザレアの土地なんだろう。


 でも逆に、魔獣がいない白い区画には日本人が生き残っている可能性がある。

 俺は異世界に転移したんじゃなくて融合した世界にいるだけだ。

 自分以外の地球人も生き残っているかもしれない。


「さっそく向かおう。でもその前に、ステータス確認!」


 名前はリブロス=トルキニウス。本名の竹中じゃないんだな。

 ナザレアでは名前に氏族名をつけるからトルキニウス族? なのか。

 種族はエルフ。今更だな。レベルは1……スキルは……


「ないな」

 道具はたくさん用意してもらったけど、能力はどうやら0からのスタートのようだ。

 高そうな杖は持っていたのに魔法は使えないし武器もない。


 うん、やっぱりナザレアの都市より一度土地勘のある日本の市街地に行こう。

 幹線道路沿いにはホームセンターのエンジョイ山田がある。


 ウェブ小説の現代ファンタジーならホームセンターは鉄板だ。魔獣がいなくても食料やサバイバルに役立つものが多い。きっと人も集まっているだろう。








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