第4話 オバケの探しもの

 唯一の出入り口にオバケがいる。

 わたしは逃げる事も、隠れる事も出来ない。

 少しずつ後ろに下がるも、オバケは近づいてくる。


 正面から見ると、思ったよりも若い。

 オバケはぴたりと止まり、顔を押さえて笑い出した。

 ケタケタケタケタ。

 しばらくそうした後に、手紙を拾い上げた。


 ……やっと、見つけた……


 オバケの体は光に包まれて、スゥーっと空に昇っていった。

 屋上には、消しゴムだけが残されている。


 地平線の向こうに、太陽が消えようとしていた。


 +++


 その後のことはよく覚えていないけれど、なんとか家まで帰って、すぐに爆睡したらしい。

 半日眠り続け、遅い食事をとった後にハルちゃんのお見舞いに行った。


「聞いて、ゆかりちゃん。予定よりずっと早く退院出来そうなの!」

「本当に?」

「うん。奇跡レベルだって!」


 笑顔のハルちゃんと抱き合って喜んだ。


 今度はお母さんと一緒に廃病院にやって来た。

 何の用なのかと不思議そうなお母さんに、「ちょっとね」とだけ答えて、歩き出す。


 携帯電話を取り出して、最後のメールを送った。


「大きなお船の船長さんへ。


 たくさんお世話になりました。


 わたしはもう大丈夫です。


 友達も元気になりました。


 どうもありがとうございました。


 船長さんとご家族にも、たくさんの幸せがありますように。


 結城ゆかり」



 完

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‪MISSENDING ~見知らぬ世界に届いたメール~‬ 秋雨千尋 @akisamechihiro

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