エピローグ

 ウルスラ王宮の裏庭に、ぽっかりと穴が開く。

 姿を現したソータは……ゆっくりと辺りを見回した。


「はあ……ここか。まぁ、人目につかない方がいいしな」


 そして何気なくズボンのポケットに手を突っ込み

「やべっ……黙って持ってきちまった」

と呟いて何かを取り出した。


 ケーゴと幼いトーマが一緒に写っている写真だった。

 二人ともいい笑顔をしていたから、ついつい剥がしてしまったのだ。


「ま……いいか」


 元の通りに……大事そうに仕舞うと、ソータはゆっくりと歩き始めた。

 四年後……水那に会うために、今を一生懸命に生きよう、と思いながら。



   * * *



「あ……これ、父さんのアルバムだ」


 遺品の整理を続けていたトーマは、隠すように仕舞われた古いアルバムを広げた。

 一緒にいたユズルが「僕も見ていい?」と聞いて横から覗き込む。


「母さん……写ってるかな」

「小5の少しの間しか一緒にいなかったっておじいさんからは聞いたけど……」


 めくっていくと……桜の季節に撮ったらしい、クラス写真が見つかった。

 「比企水那」という名前を見つけ、探してみる。色白で少し茶色い髪の少女が俯きがちに写っていた。


「……小さすぎてよくわからん」

「そうだね。会った時の、お楽しみだね」


 さらにパラパラとめくる。学年が上がるにつれて……だんだん冷めたような目つきの写真が多くなる。

 それは、実際に会ったソータとは全然違う印象のものばかりだった。


「やっぱり……ソータさんって、あっちの世界に必要な人だったんだね……」

「……そうだな。じいちゃんも、繰り返しそう言ってたから……」


 写真は19歳の7月で終わっていた。

 アルバムを閉じると、トーマは少し背伸びをして、縁側から外の景色を眺めた。

 今度会うときまでに、自分もどうするべきかを決めないとな、と考えながら。




                         ~ Fin ~




Continue to 「Makuainokoto.」・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る