第7話
幸福そうな亡霊たちの間を抜けながら、ネムのことを考える。私の知らぬ間に、死んだ息子を〈REM〉に登録した妻のことを。
葬儀のとき、確かに涙を流していたネム。
閉められる棺の蓋に縋りついたネム。
青白く、冷たく、固くなったサヨに、熱を孕んだ涙をこぼしたネム。
そして、翌日にはサヨの幻を愛でていたネム。
それこそ、私が〈REM〉という技術にはっきりと嫌悪を覚えた瞬間だった。
「ほら、サヨ。パパに”ただいま”は?」
息子が彼岸から舞い戻ったというような感動は、彼女にはなさそうだった。せいぜい泊りがけの旅行から帰ったという程度の感覚しかないような、妙に穏やかな声色と表情だった。
サヨの幻が”ただいま”を口にしたかはわからない。それを耳にする前に、彼がこちらを振り向く前に、私はサヨを
決定的に間違っていると思った。〈REM〉に対するそういった印象を、私はこれまでの人生で密かに溜め込んできていたのかもしれない。あの〈REM〉嫌いのメザマシとつるんでいた頃もそんな自覚はなかったが、そうでなければ説明がつかないような素早さで、私は息子の幻から目を背けた。
あの日から、私はサヨを見ていない。その声も聴いていないし、その肌に触れてもいない。
そして、決定的に間違えているネムを連れ戻そうと、ささやかな抵抗を繰り返している。あまりにもささやかすぎて、それが情けなくて誰にも言えずにいるが。
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