眠れない夜には音楽を

 窓に腰かけた少女。

 彼女はぼやけた月を眺めている。

 時刻は0時を回っているが、眠気はまだやってこない。


 明日への期待で目が冴えてるわけではない。今日と変わらない明日に期待なんてない。

 ただ胸の中に、気持ちの悪い熱を持った何かが、じりじりと、鳩尾の辺りを焼いている。


 誰かに電話をするには理性が強すぎて、明日も授業だからと布団にこもる程、折り合いはつけられない。


 可愛らしく、誰かを頼れたら。


 溜め息を夜風が運んでいく。見えもしないのに、あとを目で追いかけた。

 猫の鳴き声に振り向けば、物言いたげにヘッドフォンの前に座っていた。


「ああ、うん。そうだねニルさん」


 ヘッドフォンを掴んで、プレイヤーに接続して、窓に座り直す。静かな風の音も聞こえなくなる。


 こんなときは、プレイヤー君に任せよう。

 ランダム再生にして、プレイヤーをポケットにしまった。

 流れてきた曲に、つい笑みをこぼした。

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