3.迷走
呪いを解く方法
一つ、呪われた人間が死ぬ
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夜0時、お役御免と思っていた携帯電話がけたたましく騒ぎ立てる。
「何用か」
「ハッ・・・!ハッ・・・!ちょっと、今どこ」
ふざけている場合ではなさそうだ。
才川の怒りのような焦りのような感情が入り乱れた声。
「化け物が、化け物が」
「落ち着け、今から言う公園に来い。君の家は青南中学校校区だったよな」
「う、うん」
「じゃあラインで位置情報を送る。そこに来てくれ」
ジャケットに袖を通し。カバンを背負う。
「いってきます」
『いってらっしゃい』
四畳半のアパートの扉を閉め、僕は才川との集合場所へ走った。
空は相変わらずの今にも雨が振り出しそうな曇天模様。
つい急いで傘を持ってくるのを忘れてしまった。
公園へ到着するも誰の姿も無い。
雨露の滴るブランコにぶっきらぼうに腰掛ける。
お尻が冷たい。でもこれが好き。
・・・暇だ。
僕は煙草に火をつける。
「ハッ・・・!ハァ・・・」
「いらっしゃいませ」
荒い息使い、人影。
もう来たのかと煙草をぐりぐりと靴で踏み潰す。
彼女は学級委員長である事を思い出したこと今の行動は因果関係は無いと
以前と同じような言い訳を心の中でした。
「化け物が、でたの」
「それは、どんな?」
「もう、おぞましい姿だったわ!鏡に映ったのよ!瞳の無いゾンビみたいな!」
「ふぅん」
僕は鞄をあさる、あったあったとわざとらしく声に出しカメラを取り出す。
「次はこれ」
「何よ・・・それ」
「ポラロイドカメラ」
彼女の手にカメラを乗せる。
「使い方は簡単。シャッターをおすだけで下から即現像される優れものだ」
「これを、どう使うの」
「そりゃ、その化け物がいた場所をとるんだよ」
「ふざけないで!できないわよ!そんなこと!」
彼女は声を荒げる。
「どうして?」
「当たり前でしょ!化け物が出たのよ!?そんな悠長なことしてたら・・・」
「そう、か」
僕はブランコから飛び、鉄製の柵の上に着地。
その曲芸じみた行動に彼女はなんの感情も抱いていない。
かなり余裕はないらしい。
「でも、そうしないと呪いは解けないよ」
「・・・ッ!」
才川の瞳が複雑の色を混じり合わす。
「そこまで言うなら、手伝ってよ」
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才川家、何の変哲も無い一軒家。
才川は鞄からお守りのついたキーホルダーを取り出す。
「・・・やっぱりだめ。中に入るのも怖いわ」
「ふぅん」
僕は扉に手をかける。
ガチャガチャとドアノブをあげたりさげたり。
「ちょ、ちょっと」
「あかないんだけど」
「そりゃそうでしょう、鍵をかけてるんだもの」
「ふぅん、鍵ねえ」
「ねえ、やっぱり今日は止めておかない?私から言っておいてなんだけど
震えがとまらないの」
「いいけど・・・」
彼女の顔を見つめる。
靄が明らかに濃くなっている。
「霊媒師、紹介してあげようか?」
「えっ!?何よ。そんな根本的な解決が出来るなら早く教えてよ・・・」
「あまりオススメはできないんだけどね。僕、幽霊とか信じてないし」
「・・・・・・・は?」
彼女が硬直する。
「ちょっとまって、貴方霊能探偵って商売をしてるのよね」
「そうだね」
「なのに幽霊を信じてないの?」
「そうだね」
「じゃあ詐欺じゃない!」
「そうかな?」
才川が激怒している。僕はそんなにおかしなことを言っただろうか。
「もう・・・なんでこんな奴に頼っちゃったかなぁ・・・そもそも・・・ハァ。
アタシ切羽詰ってたから・・・」
「そんなに自己嫌悪しなくても」
「アンタのせいなのよ?!」
不可解だ。
僕はそうかと気がつく。
「訂正がある、僕は呪いや妖怪は信じてる」
「はぁ?」
彼女の訝しげな顔。
うぅむ。なんと説明したものだろうか。
「五秒くれ」
僕は瞳を閉じ瞑想モード。
口から言葉を吐き出すのは難しいのだ。
ちゃんと言いたいことを整理せねば。
「呪い、呪詛、妖怪、怨恨、怨嗟・・・最初例えた言葉。覚えてるか?」
「・・・ええ」
「僕はこれらは全て類似していると思ってる。例えるなら・・・そう、この「世界」
ってシステムがあって、ある手順を踏むと生まれるバグが発生したり、人々の悪意が
作り出すウィルスがあってもおかしくない。そうは思わない?現代風に言えばだけど。
だから僕みたいな霊能探偵がそのプロセスを紐解いて、解決に導く」
「・・・」
「でも、幽霊は違う。アレは死んだ人間が魂という存在になって悪意を働くみたいな
話だろう。そんなことありえないよ」
いっぱい喋ったから疲れてしまった。ああ、煙草が吸いたい。
変わらず才川の顔は険しい、僕の努力を返して欲しい。
「言いたいことは・・・わかった。でもじゃあ、今の私の家におきてる
“アレ”は何だって言うのよ。幽霊じゃなかったら何なのよ!」
「さぁ」
才川は感情をむき出しに拳を振り上げた、手を下ろしあきれた表情。
「見てみないとわからない」
「・・・そう。そうよね。でもごめんなさい。まずはその霊能者って人に
会わせてもらっていいかしら」
「それは構わないよ」
「君がいくら霊がいないと言っても私は“あれ”が幽霊にしか見えなかった。
いえ、幽霊じゃないとしても不安要素は消してしまいたいの」
「わかった、じゃあ付いて来て」
「・・・え?今から行くの?」
「善は急げって言うだろ」
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