第61話 悪魔の選択 3

 目の前で、真琴の頭が吹き飛んだ。


 顎から上がなかった。

 ぷつぷつと血が吹き出している。



「いやあああ」



 私は叫んだ。



 腹の傷なんかどうでもよかった。

 たった今、自分を守ろうと戦った真琴が死んだのだ。



 呆気ない死。

 そして、とても残酷な死。



 あんなに可愛かった真琴の顔が吹き飛ばされるなんて。

 信じられない。

 許せない。



「いやあ、いい感じにやってくれたねえ」


 悪魔がつぶやいた。


 いい感じ?

 こいつは何を言っている?


「何よ! 何でそんなこと言ってるの? 真琴が、真琴が!」



 襟首を掴んで揺さぶった。

 自分を治療してくれている恩人であると同時に「ご主人さま」でもある悪魔に向かって。



 悪魔はにやりと笑って言った。



「落ち着いてくださいよ」



 私の目をじっと見つめる。



「ほら、御覧なさい」



「ぎゃああああ、痛い痛い痛い!」



 真琴が叫んでいた。

 頭を抱えて。



 吹き飛ばされたはずの頭を抱えて。

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