第21話愛のカタチ前編

 さて、作品を作ろうと意気込んではみたものの、どういう形で作るべきか。数日経ってもこれだという案は出ていない。テーマは決まっている。もちろん恋愛ものだ。しかし、小説にするか絵にするか、はたまたゲームというのもありかもしれない。

 待て、制作時間はどうだ。隼人は作品が完成するまでいくらでも待つと言ってくれたが、さすがに一年も二年もかけていられない。いつまで待たせるんだって愛想を尽かされたら――と思うと時間がかかるような方法は選べない。


「相談してみるか……」


 相談するとして、誰に聞けばいいだろう。愛十か友人のどちらかが妥当だろうか。いや、ここは佳代に聞いてみよう。愛奈の事情を知らなそうな人の方が意外と良いアイデアを出してくれるかもしれない。

 さっそく愛十が仕事しているであろう時間を見計らって電話をかける。昨今は電話は相手の時間を奪うという主張が声高に叫ばれているが、今すぐ連絡をとりたい時はこれが一番だ。


「もしもし?」

「あ、もしもし愛奈です」

「愛奈さん! どうしたんですか?」

「ちょっと相談したいことがあって」

「愛十さんはお仕事中ですが……」

「ああ、佳代に相談したいのよ。時間、良いかしら」

「暇してるので大丈夫ですよ。それで相談というのは?」

「実は――」


 佳代に恋愛をテーマにした作品作りをしていると説明する。そして、どういった形式で作るべきかを相談してみると、佳代は創作活動をしないから役に立つとは思いませんけどと言いつつもアイデアを出してくれた。

 まず、時間をかけずに作るのならやはり短い小説や簡単な絵は第一候補になる。手先に自信があるなら絵の具を用意して粘土工作や裁縫、アクセサリー作りなども候補に上がった。しかし、これらは愛奈も考えていた。もっと、何か、画期的なアイデアがほしい。


「うーん……」

「いざ考えてみるとなかなか出てきませんね……」


 行き詰まりを感じる。


「気分転換に雑談でもしようか。その方が良いの思い浮かぶ気がする」

「そうですね。では愛奈さんは継続していることってありますか? 私は飽き性で何をやっても三日坊主になっちゃうんです」

「そうね……『愛』についてまとめているかな。『愛』を感じた時にだけ書いてるんだけど、世の中って意外と『愛』に満ちているからほぼ毎日書いてるわね」

「へぇ……なんだか素敵です。最近は暗い事件が多いですからね。日常生活ではそういう前向きなことだけを考えたいですよね」

「まぁ気持ちは上向きになったかな」

「……あっ! それを清書すれば良いんじゃないですか? 恋愛というテーマからはちょっとだけ外れますけど『愛』をテーマにと考えればこれほど良いものはないですよ!」


 佳代の言葉は天啓だった。そうだ、ずっと『愛』をテーマにしていたものがすぐ側にあるじゃないか。何も恋愛だけにこだわる必要はない。


「そっか……! ありがとう佳代。悪いけど、さっそく取りかかりたいから、電話切るね」

「頑張ってください! あ、できたら見せてくださいね!」

「もちろん!」


 電話を切って引き出しからノートを取り出す。よし、改めて見直すのはちょっと恥ずかしいけどやってやろうじゃないか。

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