第18話新居購入

 隼人が新居を購入した。実家の老朽化が進み、次に大型の台風や地震が来たら潰れてしまうということで、新しく家を買ったのだ。母親とモナカはすでに最低限必要な生活用品を持って住んでいるらしい。

 今日は実家に残っている物の運び出しだ。引っ越し業者にも頼んであり、午前中には終わりそうだと言っていた。手伝おうと思ってやってきたが、あまり出番はなさそうだ。


「助かるよ」

「そう? あんまり役に立ってないと思うんだけど」

「母さんの物をまとめるには僕じゃ大変なんだ。下手なことをすると文句言われるし。愛奈さんがいて良かった」


 光景が目に浮かぶ。家族だと何をしても文句が飛んでくるのはどこも共通らしい。もし、愛十が愛奈の荷物をまとめていたら絶対に喧嘩になる。「どうして雑に扱ったの!」って。


「この家は壊しちゃうの?」

「そうだね……残しておくと危ないし、大事になる前に取り壊しかな」


 思い出が詰まっている家を壊すのは辛いだろう。隼人はそんなことを感じさせないぐらい朗らかに笑っているが、胸中はどう思っているのか。


「寂しくなるね」

「次も新しく思い出を作れば良いさ。今度は愛奈さんも一緒に」

「えっ」

「僕は結婚前提に考えてるからね」


 隼人との結婚は悪くないと思っている。プロポーズされたら受けてしまいそうなぐらいには。隼人はまだ時期尚早だと考えているのか、単に恥ずかしがっているのか、ハッキリとプロポーズの言葉は言ってこない。ただ、新居まで購入したんだ、もう時間の問題だと思う。

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