第15話残された子供達へ

「あのね兄さん、今日は兄さん達のあまーい生活を見るために呼んだんじゃないの」

「え!」

「……色々言いたいことはあるけど、まずはこれを見て」

「指輪?」


 先日、隼人と共に訪れた墓地、両親のお墓に置かれていた指輪を愛十に見せる。


「それ、両親のお墓にあったのよ。強風注意報が出てから持って帰ったけど、どうしようかって相談しようと思って兄さんを呼んだのよ」

「うーん……二つあるから俺達で分けようか」

「随分と簡単に言うわね」

「だってお墓に戻したらなくなるかもしれないだろ。それなら俺達で持っていたほうがこの指輪も安心するってもんだ」

「まぁ、そうかもしれないけど」

「じゃあ俺は少し大きい方を貰うぞ。たぶんこっちが親父のやつだろ」

「両親のものっていう証拠はないわよ」

「あれ? 知り合いっていう女の人には会わなかったの?」

「誰もいなかったのよねぇ」


 両親のお墓にあったからこの指輪は両親のものだと思うけど、本当にそうなのかはわからないのが正直なところだ。

 それにしてもなぜ電話をくれた女性は来てくれなかったのか。電話だって一方的だった。名を名乗らず両親の知り合いだと言って、遺品の受け取り場所を指定してきて……怪しさだけなら抜群だ。


「それなのにのこのこと行くなんて、愛奈はお人好しだなぁ」

「うっさいわね……」


 確かにそんな怪しい電話なんて無視するに限るのだが、今回ばかりは行っておくべきだと思ったのだ。もちろん愛十に言われるまでもなく隼人に連絡するつもりでもあった。ああ、でも断られていたら一人で墓地まで赴いたかもしれない。


「まぁ、この指輪が誰のものかはわからないんだ。とりあえず俺達は両親のものだと思っておけば良いんじゃないかな」

「兄さんはいい加減ねぇ」

「柔軟なんだよ」

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