第6話殺人は『愛』なのか

 とんでもないニュースが飛び込んできた。

 なんと、夫が妻を包丁で刺してその後に自分も刺して自殺したのだ。仲の良いオシドリ夫婦で有名だったこの夫婦は海外在住で、目撃者は彼らの子供。十歳ほどの子が近所の人に助けを求めて事件が発覚したのだ。


「怖いなぁ。しっかし、なんで刺したんだろう」


 SNSで夫婦の生活についてあれやこれやと想像している人がたくさんいる。本当は不仲だった説、喧嘩で衝動的に殺害した説、第三者による陰謀などなど。大きく報道してしまったせいで勝手な憶測が飛び交っている。


「ん?」


 スクロールしていた手を止める。


「愛しているからこそ殺した? どういうこと?」


 初めて見る説だ。続きの文章をじっくり読む。


「妻の愛が自分に向いている間に殺しておきたかった、もしくは自分が妻を愛しているうちに美しい記憶を留めておきたくて殺したとか。俺も好きな人ができたら危ないな。君を殺して俺も死ぬ! なんてね」


 確かに「これが愛だ!」って言われたらそれはまぎれもなく『愛』なのだろう。しかし、赤の他人の愛奈からしたらそれは『愛』なのかと疑問に思う。


「愛……愛ってなんだ……?」


 またわからなくなる。クマのぬいぐるみのおかげでわかった気でいたが、世の中には理解不能な『愛』がある。

 殺害は『愛』と認められるのか。愛奈は新たな疑問に頭を悩ますことになった。

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