第66話 明日の予定は


『明日ヒマか?』


『用事があり申す』


『試験勉強見て貰いたいんだが』


『神威なら他に連れるでしょ』


『お前じゃダメか?』


『さてね』


 別段リップサービスも行使能わず。


 どうしても面倒くささが先に立つわけで……いや、今回に限っては確かに予定が入ってるんだけど。


『ちなみに用事って?』


『室内デート』


『……マジ?』


 三点リーダをつけるほどですか。


『今更ではあるんですけど』


『アイツか』


『そ。アイツ』


 春人=アンデルス。


『俺よりそっち優先か?』


『都合上ね』


『いつなら会える?』


『確約は出来ません』


『じゃあ会いたくなったら校門に立つぞ』


『迷惑』


 スパッと介錯。あくまで言語で。とはいえそれで断ち切れるなら、神威はもうちょっと大人だろう。


『じゃねーとお前捕まらないし』


『希少保護動物扱いですか』


『希に見る……って点ではそうだな』


 アーゲー。


『期末試験前にデートはどうよ?』


『どうせいい点数獲ってんだろ』


 そうですけどね。


 中学の頃から、それなりに勉強はやってきたつもりだ。


 殆ど暇潰しの領域だけど……これは既述した。


『今何してるんだ?』


『神威とライン』


『お前、本当に良い性格してるな』


『一通り世間に揉まれていますので』


 ちなみに風呂に入っている。


 最近の電子機器は防水完備なので、有り難い事だ。


 パシャッと、湯を撥ねさせる。


『好きな奴とか出来たか?』


『お兄ちゃん』


『え? ガチで?』


『言葉は重ねない』


『冗談かよ』


 よくおわかりで。


『今も陰キャやってんのか?』


『色恋沙汰の問題は面倒だし』


 モブキャラ万歳。


『十分巻き込まれている気もする』


 何を根拠に。


 いや、まぁ、否定は出来ないんだけど。


 実際に、春人と五十鈴には憎からずなわけで。


 学校では、凜ちゃんも味方か。


「気が重い……ってこういうことかな?」


 地声で呟いて、湯を肩に掛ける。


「お兄ちゃん……か」


 今頃大急ぎで原稿を書いているだろう…………血を分けた人間に思いを馳せるのであり申しました。


『こっちでも時々聞くんだよな』


『神威の格好良さ?』


『陽子の可愛さ』


『趣味の悪い』


『そうか?』


『性格ブスだから』


『それこそそうか?』


『御機嫌ですな』


『無理に悪役ぶらないでも良いんじゃないか? 可愛いって言われてんだから、素直に賞賛を受け取れよ』


『畏れ入ります』


『だ~か~ら~なんで距離取るんだよ』


『神威と一緒に居ると、女子に嫉妬される』


『あー……』


 自覚はあるのね。


『迷惑か?』


 偏に。


『神威のせいじゃないけどね』


 フォロー程度はすべきだろう。


 本心は別にあっても。


『神威は格好良いし』


『そう思ってくれるのか?』


『イケメンの知り合いは多いもので』


 お兄ちゃん。


 凜ちゃん。


 春人(男装バージョン)。


 五十鈴。


「あれ?」


 よく考えると、乙女系の状況か?


 陰キャなのに?


 けれど神威も関わってくるし……。


 他の女子にも面白くないのだろうか?


 ことは五十鈴だけの問題でない……と?


「うーむ」


 悩んでしまう。


『夏休みは会えるか?』


『確約は出来ない』


『その気になったら連絡くれ』


『さっさーい』


 そんな感じのやりとりでした。

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