第37話 ふわとろオムライス
「やっほ」
「よう」
時間通り。
喫茶店前で、集合する私たち。
私はデニムの春コーデ。
髪はストレートで、眼鏡も無し。
ちょっとギャルっぽいメイクをしてみた。
「懐かしいな」
「まぁね」
そういう神威はジャケットとジーパン姿。
プレートのネックレスが、陽光を反射する。
髪はワックスでとげとげにしていた。
「うーん。イケメン。コレは確かに周りの女子が放っておかないかも……まぁ趣味の多様性はここで述べるまでもないけども」
「惚れたか?」
「別に」
端的に述べるなら、見飽きている。
神威が格好良い男の子……それは認識した上で、それでも私にとっては大和男児の延長線上の存在でしかない。
「なんて言うかさぁ。おまえさぁ」
「何か?」
「いい。この唐変木め」
至極光栄に。
「ていうか此処で良かったのか?」
「回らない寿司屋でも良いんですけど……それだけの財布事情を持っていらっしゃるので? 今からでも修正が聞くのならその通りに致しますが?」
「うぐ……っ」
そんなわけで喫茶店に入る。
「いらっしゃいませ」
とは店員さんの御言の葉。
お冷やを持ってこられ、お品書き。
「エスプレッソとふわとろオムライス」
「カプチーノとナポリタン」
「承りました」
伝票に書き込んで、下がるウェイトレスさん。
「今日は何してたんだ?」
「勉強」
「休みの日によくやるな」
「別に勤勉って話でも無いけどね」
「楽しいか?」
「物理と数学は特に」
「何故?」
「パズル感覚で楽しめるから」
事実だった。
公式に当てはめて、綺麗に答えの出るところは、わかれば楽しい。
色んなバリエーションが楽しめるしね。
「因業だな」
「こればっかりは生まれつき。別に勉強が好きなガリ勉じゃないけど……普通に問題を解くのはクイズ感覚だしね」
差し出されたコーヒーをゴクリ。
「そっちの高校生活はどう?」
「それなりだな」
「嘘吐け」
半眼で睨む。
「何故に?」
「こっちであれだけなら当校だともっといるでしょ?」
「まぁ告白はされた」
「わお」
「心を込めずに言われてもな……」
「実際モテるしね」
おかげで私に迷惑が降りかかったワケだけども。
「有り難い事だ」
大和男児としての格好の良さは認める。
事実、おかげで私が自重する羽目になった程度には。
しばし四方山話。
アイドルがどうの。
政治事情がどうの。
勉強の形がどうの。
何につけ、他者の意見は貴重だ。
私としても、神威の意見には耳をよせることができて、鞭故の発想は少し感銘も覚えたり覚えなかったり。
そこでウェイトレスさん。
「こちらオムライスとナポリタンになります」
とのことで、昼食を開始。
オムライスをハムリ。
卵ふわふわで、チキンライスはしっかり味を付けられている。
「幸せ」
「安いな」
そんなもんです。
洋風天津飯とでも言うのでしょうか?
なんとなく、そんな感想。
「は……」
神威も、ナポリタンを食す。
「で、彼女作らないの?」
「それには既に言った」
「だったね」
ふわとろ。
幸せ。
「本当にわかってるか?」
「男にしか興味ないんでしょ?」
「喧嘩売ってるんだな?」
「ジョークの一環」
ふわふわ卵。
デミグラスソースがまた美味。
「学校では陰キャなんだよな?」
「ですねぇ」
「男作る気無いの?」
「お兄ちゃんを見て育ったからね」
本人には言えもしないんだけども。
「ああ、あのイケメンの」
「好男性ね」
必然、男子の評価も辛口になる。
今は凜ちゃんもいるしね。
あれは一つ……何と言うべきか……女の子にとって究極とでも呼ぶべき完成された好男性で、紳士の属性も兼ね備えた完璧超人だ。
「何だかなぁ」
とは私の嘆息。
因業。
そう評された。
――事実そうかもしれない。
それは喉の小骨だった。
ふわとろオムライスは絶品でございました。
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