第24話 陰キャのわけ


「で、気になってたんだが」


「はいはい」


 引き続き喫茶店。


 私はショートケーキをフォークで崩していた……。


 なんというか、絡め取られたパズルを解放するような……そんな感じの想定をして、なお口に入れるとほろ甘い感覚に酔いしれる。


「その変装はなんだ」


「変装?」


「眼鏡」


「伊達にございます」


「あとおさげも似合ってない」


「知ってる」


 そこら辺は自認だ。


「高校デビュー?」


「普通派手めにならないか?」


「陰キャデビュー」


「それこそ何故よ?」


 まぁそう言いますよね。


 私としては、それなりに理由のあることではありますけども、それにしても神威にとってはイメチェンの一種ととれましょうぞ。


「調子乗ってるって思われると面倒だから」


「うーむ」


「文学少女っぽいでしょ?」


「どっちかってーとイモだな」


 それを目指しているので、到達点。


「勿体ないって」


「今更イメチェンもなぁ」


「とりあえず此処では止めてくれ」


 へぇへ。


 伊達眼鏡を取り払って、おさげを解く。


「これでいい?」


「おう。やっぱそっちがいいな」


 可愛いらしい。


 燃え萌え。


「ま、サービスってことで」


「あー、でもソレで学校いると男が放っておかないか?」


「かもね」


 ――イヤな奴。


 そう思われるかも知れないけど、客観的データとして、今まで告白された回数が明敏に事実を裏付けている。


 南無三。


「ぶっちゃけ男とか」


「出来たよ?」


「ガチ!?」


 何故驚く。


「どんな奴?」


「こんな奴」


 私は隣で紅茶を飲んでいる男の娘を指した。


「は?」


 と呆けて、


「ん?」


 と自問して、


「えーと」


 世界の真理を垣間見る。


 金髪と眼鏡で顔を隠した男の娘。


 来ている黒のセーラーがよく似合う。


 陰キャ。


 モブ。


 そんな具合。


「男?」


「染色体としては」


 確証は私も持っていない。


 けれど自称男だ。


 実際に最初のデートでは、すさまじいイケメンを披露してくだすった。


 ジーザス。


「むぅ」


 何か?


「名前は?」


「えと……」


「まず自己紹介」


「だな」


 苦笑が閃いた。


「お控え為すって。絵馬高校に通う生徒の一人。姓は碓氷うすい、名は神威かむいと発する」


「春人=アンデルス……です……」


「ハーフか?」


「です……」


「本当に男?」


「です……」


 この奥ゆかしさよ。


 可愛いと言うか……何というか……このオドオドとした態度と反応そのものが、一種の極致点を反映していると言って過言で無いのだ。


「陽子と付き合ってんのか」


「違います……」


 まぁね。


 ちょっと憧れは持ってるけど。


 さすがに、イケメンバージョンの春人を忘れるには、時間が足りない。


「ならいいんだが」


 い~のかな~?


 この魂に憐れみを。


「とにかく」


 うさぎにつの。


「コメントスルーは止めてくれ」


「へぇへ」


 それで神威が納得するならね。


 私としても、学校に来られるよりはマシだ。


「あう……」


 春人が漏らした。


「何か?」


「イケメンさん……ですね……」


 エッチな目で見られたいのだろうか?


 此処で問う事は出来なかった。

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