第25話 チンジャオロース


「お帰りなさい」


 マンションに戻ると、我が家の戦力にして学内での戦力……凜ちゃんが出迎えてくれ申した。


「ども」


「手伝いのほどありがとうございました」


「それくらいは頼って」


 凜ちゃんが微笑めば、女子生徒は率先して手伝いそうだけど。


 それをわかっていて、それで私を頼ってくれるのは……まぁ嬉しくもあり複雑でもあり、あるいは業が深くもあり。


「出来れば学内でも宜しくしてくだされば」


「首締めるよ?」


「難題ですね」


「そ~かな~?」


 にゃー。


「お兄ちゃんは?」


「出版社に」


「ああ、それで」


「ええ。陽子さんのフォローを」


「そこまでするか~」


「苦痛ではありませんよ?」


「そういうよね」


「事実なのですけど」


 知ってる。


 凜ちゃんの優しさ……というか人の良さは、三千世界で一等賞と褒め称えられる程度には心地よい。


「ご飯は?」


「チンジャオロースで良かったですか?」


「大好き」


「はうあっ」


 そこでハートを射貫かれあたっても。


「凜ちゃんのご飯は美味しいしね」


「ありがとうございます」


「こちらこそ」


 そんなわけで、夕飯となる。


「そういえば校門での一件ですけど」


「耳にしてるんだ?」


「噂が噂を呼び」


「南無阿弥陀仏」


「中々の好男子に誘われたとか」


「神威ね」


「受験勉強を見てやったんですよね?」


「そ」


 チンジャオロースをハムリ。


「なんかラインしてって」


「しなかったんですか?」


「嫌われてると思ってたから」


「あー」


 その辺の事情は、凜ちゃんも知るところ。


 一応、話もしているしね。


「大丈夫ですか?」


「心丈夫ではあるかな?」


「サッチャー……」


「止めてその比喩」


 冗談だとは分かっていれども。


「おかわり」


「承りました」


 もぐもぐ。


 がつがつ。


「美味しいですか?」


「とても」


 愛がある。


 哀しみがある。


 ついでに慈しみも。


「凜ちゃん何でも出来るね」


「出来ない事だらけです」


「ちょっと想像つかないな」


「先生みたいな事は出来ませんし」


「そなの?」


 やろうと思えば出来る気もするけど。


「無理ですよ」


 穏やかに微笑む凜ちゃん。


 お兄ちゃんを尊敬する目だ。


「文字で人を恋に落とすのは、先生でなければ出来ません」


「あー」


「です」


「なんなら私とエッチする?」


「有り難い提案です」


 柔和な笑顔と言葉。


「もしもこの気持ちが三年後も摩耗しないなら是非に」


 こ~ゆ~ところがイケメンだよね。


 お兄ちゃんも、イケてるけど、アレはアレでなぁ。


 春人もそうか。


 じゃあ神威は?


「……………………」


 少し考える。


「何か懸想でも?」


「鋭いね」


「陽子さんのことはあらかた」


 それもどうだろう。


「それが嫌みにならないのが凜ちゃんの凄いところだと思う」


「光栄です」


 褒めたつもりじゃなかったんだけど。


 チンジャオロース。


「悩み事を話す気になったら何時でもどうぞ」


 乙女の領域に踏み込んでこないのは流石。


「紳士だね」


「目標です」


 既に体現している気もするけど。


「そうでしょうか?」


「ま、ね」


 チンジャオロース。

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