第23話 碓氷神威


「久しぶりだな」


「だね~」


 帰り際。


 女子にたかられていた神威と再会して、私たちは近場の喫茶店に入った……というのも落ち着いた話が出来る場所が欲しかったからだ。


 私と、神威と、それから春人。


 コーヒーを頼んで、お冷やを一口。


 黒眼は、少し……はにかんでいる。


 なんというか、お兄ちゃんや春人のような特異性がなく……凜ちゃんのような物腰柔らかい紳士でもなく、少年が少年のまま好感を得るような、未熟のイケメン。


 実際モテてはいた。


「何か用でも?」


 サラリと口火を切る。


「会いたかったんだよ」


「そりゃ光栄」


 運ばれてきたコーヒーを飲む。


「ていうかな」


「はい?」


「なんでメッセ既読スルー?」


 卒業休みから、ラインでコメント来てたけど、私は神威のコメントを全てスルーしていた。


 既読を付けたのは、別に読みたいからではなく、スマホのサインを消すためだ。


「迷惑かなって」


「何が?」


「私が神威に近付くと」


「それこそ何でだよ?」


「…………」


 コーヒーを頂く。


「俺を無視してた理由か?」


「まぁ……その……」


 何と言うべきか。


「私と一緒に居たら、神威まで評判落ちそうだったから」


「はぁ?」


「あれ?」


 何かしら齟齬があるような。


「誰がそんなこと言ったんだ?」


「お友達と思っていた空想上の生物」


 陰口を、聞いたのだ。


「空気読めてない」


「調子こいてる」


「ビッチ」


「碓氷くんにも迷惑だってわからないかね?」


 そんな御意見。


「あー……」


 だいたいわかられたらしい。


「てい」


 デコピンをくらった。


「……っ」


「パーかおまえは」


「否定はしない」


「そゆ意味じゃなしに」


「何よ?」


「迷惑だなんて有り得ないだろ?」


「そうかなぁ?」


「少なくとも俺は思ってないぞ」


「じゃあ幻想種の発言は何よ?」


「ルサンチマン」


 それもあるね。


「ぶっちゃけ恩人だぜ? 絵馬高校に入れたのも、陽子のおかげだろ?」


「で、女子の反感を買ったと」


「それはすまん」


「神威に責任が帰結するわけじゃないけどね」


「だからコメントスルーしてたのか?」


「迷惑かなって」


「だから有り得ない」


 それは聞いた。


「で、なんでストーカー?」


「ストーカーか?」


「校門で待ち伏せたんでしょ?」


「そうだが……」


 ちなみに春人は淡々と紅茶を飲んでいた。


「でもしょうがなくね?」


「まぁ」


 コメントスルーで、電話にも出なければ、ダイレクトアタックしかないのは、頷ける話ではあった。


「こっちは試験勉強見て貰ったお礼に何かお詫びしたいってのに、蒸発されるんだぜ? 有り得なくね?」


 知らんがな。


 神威に悪意がないのは私も再認識したけども。


 おかげで目立ってしまった。


「気にしなくて良いよ」


「そういうわけにも……」


「じゃあここに会計お願い」


「あ、ああ……」


 南無。


「それでさ。ラインのスルー止めてくんない?」


「足引っ張らないならね」


「悪かったって」


 女子にしてみれば面白くないんだろうけど。


 コーヒーを一口。


「ラインくらいなら付き合いましょうぞ」


 誤解が解けたなら、遠慮のしようもありませんぞよ。


 てなわけで、


「マジ? ガチで?」


「嘘って言って欲しいの?」


「それは困る」


 さいでっか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます