第22話 久方ぶりの再会
「マジ?」
「アプローチかけちゃう系?」
「ていうか誰待ちよ?」
四月も折り返し。
ブルーマンデーの放課後。
学内はちょっとした噂で、私にはちょっとわからない領域ですけども……キャイキャイ騒いでいた。
なんでも、
「校門にイケメンがいる」
らしい。
風聞を聞くに。
さらに耳敏く。
女子生徒の群れが、教室の窓から校門を見据え、何かとザワザワガヤガヤと相成ってございます。
「あれって絵馬高校の制服っしょ~?」
「あー、彼女待ち?」
「えー、それアリ?」
死ぬほどどうでもいい。
「陽子さん……」
とは後ろの席の、春人。
今日もモブ美少女絶好調。
エッチな視線が大好きな変態でもある。
「帰りましょう……?」
「そうね」
今日は図書室に寄らない日らしい。
案外仲良くなってきている。
拈華微笑。
と、
「有栖川さん?」
「はい?」
凜ちゃんに呼ばれた。
「何でしょう? 日高先生」
「それからアンデルスさん」
「あう……」
春人にまで声をかける。
「少し書類を運ぶのを頼みたいのですけど」
「構いませんよ」
「微力ながら……」
そんなわけで、こんなわけ。
職員室から、特別棟まで、書類を運ぶのを手伝った。
「凜ちゃんの仕事じゃないの?」
「いいじゃないですか。内申書が肯定的になりますよ」
「特に要らないかなぁ」
「そう言わず」
「ジュース奢ってね」
「その程度は構いませんよ」
サラリ。
涼風の様に笑う凜ちゃんでした。
「仲……良いんですね……」
「ちょっとした知り合いでね」
「そういう……感じ……?」
「誤解」
「あら。拙は有栖川さんに好意的ですよ?」
「仲良くはするけどさぁ……。教師としてその発言はあまりにどうなんでしょ? せかちに怒られるよ」
ジト目。
「そのレベルで済めば良いですけどね」
確かに。
「あう……」
「そこで赤面するんだ」
ちょっとわかりづらいけども、春人は中々に純情だ。
変態も事実だけどね。
仕事が終わって、それから自販機でジュースを奢って貰った。
私はコーヒーのブラック。
春人はミルクティー。
凜ちゃんはオレンジジュース。
「なんで日高先生が一番子どもっぽいの?」
「ビタミン補給です」
野菜食え。
「それでは、御苦労様でした」
「何かあったら頼ってね」
「ええ。期待させて貰います」
穏やかに笑みを浮かべる。
全く嫌みになっていない辺りが空恐ろしい。
「じゃ、帰ろっか」
丁度ご近所だ。
「ですね……」
春人も頷く。
外靴に履き替えて、校門へ。
何やら一団が居た。
黒のセーラー服。
時代に取り残された泰山高校の制服が、甘味を見つけたアリのように、群がっている。
「ま、関係ないか」
サラリと無視。
「誰待ち?」
「ライン交換しよ?」
「絵馬高校っしょ? ここで何してんの?」
やいのやいの騒ぐ女子生徒らに、
「いや、だから待ち人がいて」
絵馬高校の男子生徒はタジタジだった。
スルーが健全。
そう思って通り過ぎようとすると、
「陽子!」
声がかかった。
男子生徒から。
「…………神威?」
大和男児を思わせる雰囲気。
髪も染めていないし、チャラくもない。
むしろ普遍でありながら、漂う清潔感が、彼を特別なモノにしていた。
中学時代に交流のあった男子生徒。
なるほど確かにイケメンだ。
中学時代も、女子に好意を寄せられていた。
「っていうか、その格好は……」
神威は私に向けて、二度見、三度見していた。
此方にも都合はあり申しまして。
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