第15話 陰キャ生活


「おは~」


「おはようございます……」


「良い天気ね」


「小秋日和……といった風情で……。なにかと陽気な……今日この頃……如何にお過ごしで……」


 陰キャさんが、会釈する。


 派手な金髪。


 前髪で顔を隠し、眼鏡で印象を変えている。


 それは私もなんだけど。


 伊達眼鏡同盟。


 私も三つ編みおさげで、太いフレームの伊達眼鏡。


 見た感じの自己評価は、陰鬱な文学少女というか、友達やスマホよりも本が好き的な、完全に陰キャだ。


 スクールカーストに逆らえない系の薄幸(発酵?)の女子。


 南無八幡大菩薩。


 ちなみに……登校途中での出来事でありまして。


「今日、小テストあるよねー」


「ですね……」


「ちょっち憂鬱かも」


「そうなのですか……?」


 通学路を歩きながら。


「いや、お手上げってわけじゃないんだけど」


「では……」


「なーんか試されてるって思うと緊張しちゃって」


 あはは。


 そう笑う。


「授業では……結構……好成績ですよね……?」


「見てるの? 恥ずいな~」


「それなりに……」


「照れる」


 クスクスと笑う。


「でも、そういう春人も、淀みないよね」


「そうでしょうか……?」


「自覚無いの? 天才タイプ?」


「いえ……そんなつもりでは……」


「ジョークし」


「ですか……」


 気疲れの吐息。


 ところで、


「…………」


「やん……」


 スカートを捲ろうとした私。


 スカートを押さえる春人。


「何を……」


「いや。ショーツはどうかなって」


「女性用です……」


「ガチだな~」


「です……」


 少しはにかむ春人でした。


 表情を読むのは難しいんだけど、最近私は慣れてきた。


 女子の黒セーラー姿の春人。


 男女問わずドン引き。


 体育の授業は、色々と。


 着替えも一苦労だろう。


 で、それと仲良く付き合っている私でございました。


 おかげでATフィールド全開なので、


「同盟……」


「伊達眼鏡同盟」


 その様に、よく春人と一緒になった。


 授業でも相方。


 女子扱いされた方が、喜ぶ春人ですので。


 それはそれでどうなんだ?


 思考遮断。


「そっちはテストは大丈夫そう?」


「それなりに……」


「良かれ良かれ」


 しばらく歩いて学校に着く。


 注目を集めた。


 百パーセント、春人が。


 陰キャとはいえ、女装だ。


 よく似合っているけど、「常識から遊離している」も事実で。


 さめざめと。


「ふふ」


「その不気味な笑み……なんでしょう……?」


「ちょっとした優越感」


「?」


「春人が超絶イケメンって知ってるのが私だけってのは……選民思想を指嗾されるよね」


「イケメンじゃ……ないですよ……?」


「ご謙遜」


「あう……」


 案外初心い。


 そゆところも加点対象。


 昇降口で、上履きに。


 教室に入ると、何時もの席で、二人で駄弁るのだった。


 ちょっと陰気な私と春人。


 眼鏡掛けて、モブになって。


「それではホームルームを始めますよ」


 特進クラスにも、しがらみはある。


「…………」


 凜ちゃんは、私に苦笑を向けた。


 ――何か仰いたいことでも?

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