第12話 陰キャ事情


 一言で述べて、


「イケメン」


 だった。


 ハーフの金髪。


 ショートで、輝いている。


 裸眼だ。


 眼鏡はかけていないらしいけど…………それにしても蠱惑的な瞳には何かしらの魔力を感じる。


 服装は、ジャケットとデニム。


 何より表情が見えていた。


 ワックスで、粗雑にかき上げた髪。


 学校では、前髪で目元を隠して、眼鏡をかけていたのでわからなかったけど、爽やかな印象の好男子だった。


「春人……よね?」


「そういうそっちは……陽子さんで……?」


 お互い、相手を認識できていないらしかった。


 たしかに今日の私はモブキャラじゃないけど。


「イケメンじゃん」


「そういう陽子さんこそ……華やかですね……」


 双方照れる。


「でもなんで?」


「何がでしょう?」


「普通にイケメンだよ?」


 いやガチで。


 驚くのも無理なし。


「学校でもソレで行こうよ。超モテるよ?」


「いえ……その……今日だけ特別なんです……」


「もしかして私のために気合い入れたの?」


「それも……ありますけど……」


 他に何か?


「いつもは……女装するんですけど……」


「あー……」


 まぁねぇ?


「そうすると……高確率で……ナンパされちゃうんで……」


 そこまでか。


「だから迷惑掛けないように……男っぽく……」


「にゃるほど」


「そういう……陽子さんも……今みたいなのが……いいんじゃ……ないでしょうか……?」


「あー、やりゃ出来るんだけどね」


「勿体ないですよ……」


「調子こいてるって思われたくないのよ」


「こんなに……可愛いのに……」


 粛々と。


「コンタクトですか……」


「んにゃ?」


 目元に人差し指をあてて、ウィンク。


「裸眼」


 キャピッと。


「学校で付けてるのは伊達眼鏡」


「わお……」


「何故に」


「僕も……伊達眼鏡なので」


「そうなんだ」


「顔隠さないと……やっていけないし……」


 それは私もよくわかる。


 まして、春人はイケメンだ。


 今日のままで学校行けば、男女問わず放っておかないだろう。


「なので……まぁ……」


「伊達眼鏡同盟だね」


「同盟ですか……」


「これさ」


「はい……」


「二人だけの秘密にしない?」


「秘密」


「私と春人の本当の顔を晒すのは、二人の時だけってことで」


「えと……その……本気モードの時は……女装なんですけど……」


「そっちも今度見せて?」


「いい……ですけど……」


「やり! 約束ね!」


「はあ……」


「いやぁ。それにしてもイケメンだわ。ガチで良い買い物」


「陽子さんこそ……」


「同盟だね」


「同盟です……」


「じゃ、行こっか。チケット買わないと」


「ですね……」


 そして私と春人は、映画館の方へ足を運んだ。


 これがまた注目されて。


「春人大人気」


「陽子さんじゃ……ないでしょうか……?」


 嬉しいこと言ってくれるねアミーゴ。


「じゃ、楽しもうね」


「ええ……それはもう……」


「席は後ろの方がいいかな?」


「あまり変わらないと……思いますよ……」


「たしかに見にくい席ってのもないわよね」


「です……」


 そんなわけで、オニ狩ルもみじの映画を楽しむことに相成りました。


 南無阿弥陀仏。

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