第10話 色々と手探り


「陽子。起きろ」


 入学から少し。


 私はお兄ちゃんに起こされた。


「もうそんな時間?」


「ミラーマン」


 そういうネタは良いから。


「遅刻するぞ?」


「その場合はお兄ちゃんに送って貰うから」


「だな」


 そげなわけでこげなわけ。


 お兄ちゃんの造った朝食をはむはむ。


 口内が幸せで、絶頂で、最高にハイって奴だぁ! ――的な感じでございましょうか?


 グイッ、と、最後に味噌汁を飲んで、朝食終了。


 顔を洗って、髪を結う。


 伊達眼鏡をかけて、陰キャ完成。


 黒のセーラー服もまた、モブっぽい。


 唯一茶髪がね。


 言って始まるものでもないけど。


「じゃあ送るか?」


「お願い」


 そこなことでここなこと。


 お兄ちゃんも大学に顔を出す予定らしい。


 片手間に送られた。


「それじゃな」


「ありがと」


「勉強頑張れよ」


「それなりにね」


 そしてエンジン音を上げて、お兄ちゃんが遠ざかる。


 私は教室に入った。


 朝の時間。


「おはよ。春人」


「……おはようございます……陽子さん」


 ――有栖川ありすがわ


 ――アンデルス。


 ホームネームの関係で、初期の席は、春人と近かった。


 廊下側の席。


「日曜日のことだけど」


「……あ……う」


「何よその反応?」


「……大丈夫です」


 そうは見えないけど。


 ま、いいか。


「どこの映画館にする?」


「……モールで……いいのでは?」


「百貨繚乱ね?」


「……です」


 照れ照れ。


 春人。


 超可愛い。


 ぐうかわ。


 しばらく話していると、担任が教室に入ってきた。


 日高先生も一緒だ。


 女子が騒ぎ出す。


 ま、凜ちゃんイケメンだしね。


 乙女の扱いも一級品。


 お兄ちゃんも大概だけど、凜ちゃんも相応だ。


「…………」


 こっちを見て、クスッと笑う。


 面白くないなぁ。


 何となく。


「それではホームルームを――」


 ってな具合。




 ――中略。




「有栖川さん?」


 凜ちゃんが声を掛けてきた。


「何でしょう日高先生?」


 ペルソナ被った私。


 微笑みも中々のもの。


「資料を運ぶのを手伝ってくれませんか?」


「了承しますよ」


 そう相成った。


 そしてそれから。


「陽子さんは勿体ないですよ」


「何が?」


「可愛いのに陰キャとか」


「別に」


「可愛いですよ」


「出る杭は抜かれるからね」


「陽子さんらしいです」


 ――似た会話を前にもしたね。


「凜ちゃんは大丈夫?」


「何がでしょう?」


「就職した仕事場とか」


「まぁ何とか」


 クスッ、と、笑われる。


「その適応力は賞賛に値するね」


「陽子さんと一緒というのも大きいですけどね」


「照れる」


「その退廃さはどうにかなりません?」


「凜ちゃんは知ってるでしょ?」


「それはまぁ」


「そゆこと」


「けど……モブでイモな陽子さんはあまりに損していると捉えられます」


「ま、そんなもんでしょ」


「御本人納得ですか」


「凜ちゃんが知ってれば問題ないし」


「ある種の独占ですね」


「ご自由にどうぞ」


 凜ちゃんなら間違いも起きないだろうし。


「萌え萌え」


「そゆことを語呂で言わない」


 そんなに私は可愛いかなぁ?

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