第6話 陽子と春人の共通点
放課後。
まず真っ先に、私は当校の図書室に立ち寄るのだった。
家族の影響だ。
本を読むのは私の趣味。
特にラノベ。
図書室にも、その手の本はある。
市立図書館も、積極的に利用している。
本は場所を取るので借りるのが私のジャスティス。
「外法少女オニ狩ルもみじ……ですか」
タイトルを読んで、ポツリとつぶやくと、
「……あう」
遠慮がちな、感嘆詞が聞こえた。
声のする方へ、視線を遡行させる。
金髪の乙女がいた。
正確には、
金髪。
眼鏡。
黒のセーラー服がよく『似合っていない』男の娘。
金髪は、もうちょっと派手めの服装が、しっくりくる。
「アンデルスさん……」
他に金髪もいないだろう。
前髪で顔を隠しているので、御尊顔は拝謁できないけど。
「……有栖川さん」
「おや、覚えてくれていたので?」
「……茶髪は……珍しいし」
「金髪もね」
「……地毛だよね?」
「残念ながら」
「……残念なの?」
「ちょっとね。やっぱり目立つと凹まされるから」
「……それは……わかるかも」
金髪なんて、もっての外だろう。
「……有栖川さんは」
「陽子って呼んで」
「……何ゆえ?」
「苗字だと偉そうに聞こえるの。ちょっとしたコンプレックス。別に気にはしないけれど精神的安定を求めて」
「……では陽子さん」
「はいはい」
「……ラノベ……読むの?」
「お恥ずかしながら」
「……外法少女って」
「まぁね。そのね」
「……好き……なの?」
「大好きよ」
「……ふわ」
頬を赤らめてらっしゃいました。
「春人も?」
「……えと……はい」
「そ」
「……同志……ですね」
「そうかもね」
あまり人に勧めがたい趣味だ。
私の場合は、お兄ちゃんのせい。
「……今やってる……劇場版は……見ました?」
「初日に」
「……本物です」
――じゃあ、何をすれば偽物よ? って話だけど。
「……面白い……ですよね?」
「否定はしない」
「……陽子さんは引かないんですか?」
「ラノベを?」
「……いえ……それは」
「既に語ったよね」
「……僕の……金髪とか」
「ハーフかクォータ?」
「……ハーフです」
「地毛が黒じゃない苦労は……私も知ってるし」
退廃的な口調も、処世術だ。
「……えと……その」
「まだ何か?」
「……お友達に……なっては……くれませんか?」
「構わないけど私で良いの?」
三つ編みおさげの、太いフレーム眼鏡。
モブで、イモで、陰キャだ。
「……その……失礼かも知れませんが」
「そうかどうかはコッチで決める」
「……何か……通じるところを……感じます」
「そ」
「……失礼……でしたか?」
「さほどでもないね」
外法少女を取り出して、
「読む?」
と尋ねる。
「……宜しいので?」
「既に読んでるし」
「……では……有り難く」
「宜しい」
クスッ、と、笑う。
「そうだ。ライン交換しない?」
「……僕で……いいので?」
「異色同盟ってことで」
髪の色ね。
「……では……そちらも有り難く」
ふわふわした、御言の葉だった。
ちょっと可愛い。
男にしておくのが、勿体ないくらい。
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